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ブル・マスケライト《仮面の血筋》100ページ短編小説No.1


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ブル・マスケライト《仮面の血筋》 
「ああーもう月曜日かー」
今日はめずらしく2つ目の目覚ましで起きた。朝食はいつもパン。トーストに目玉焼きチーズを乗せてチンする。さいごに粉チーズをかければ毎日の僕のルーティン。
「ちょうど粉チーズが終わった。帰りに買って帰ろう」
食べ終わると隣の椅子に掛かってる脱ぎっぱなしの制服に着替え、玄関にあるカバンを手に持って学校へ行く。
「いかん。携帯、携帯。」
一度戻り、テーブルの上から左ポケットに滑り込ませる。
外に出るといつもの秋の空。白い雲が顔の様にたくさん並び、碧色がよけいに雲を引き立てる。なんとも言えない森の香りが漂い、少量の朝日が僕の顔を照らす。
見飽きたいつもの平和な田舎道。もはや雑音でしか無い様々な虫の鳴き声。そしてこの角を曲がるといつものあいつの足音が…
「ダッダッター」
「おっす!たちばな、今日もキレイな空だぜー」
やっぱり来た。そしていつもに増して朝からこのテンション。萎える。彼の名前は袴田文太。あだ名はブッダ。顔と体は小豚そのもの。高校生とは思えない幼稚な性格とアホさ加減。見てるだけでイライラする。こいつとそこらのイケメンを洗濯機に入れ足して2で割って天日干しに…
「ん?たちばな何か言ったか?」
「いや別に何も…」
「いやー昨日は楽しかったなあー毎日がハロウィンだったらいいのになあ」
「そんなに楽しかったか?俺はもういいぜ。ああいうのは向いてない」
「お前は冷静すぎるんだよ。もっとパーっと弾けないと俺みたいに」
「お前…やっぱ人生得してんな。」
顔以外は…。と、いつもなら言うが今日は封印しとく。
「違うよ!お前が損してんだよ。だって昨日の今日だぜ?あんだけの都会の美女たちを目にしてなんで冷静にいられるんだよ。やっぱ渋谷は凄かったな~。天国ってあんだな~」
「さすが女好きなだけある」
そう、昨日僕とブッダは初めて渋谷に行った。というかこいつに無理やり連れてかれた。ハロウィンだけあって凄い数の人達が私を見ろと言わんばかりにこぞって顔をメイクしたり被り物をして練り歩く。普通の格好をしてる人がおかしいと思わせる陽気なコスプレ。街はカボチャやコウモリがそこら辺に散りばめられどこを歩いても華やかで活気に満ちていた。田舎モンから来た俺らには想像以上の世界。それと並べると確かにうちの学校の女子なんて芋のなかの根っこ。根っこの中の髭と同じくらい目立たない。そういう意味ではブッダと同じ意見だ…。そういう意味ではだが。
いつもならこんな話をしてるとそろそろ例の芋っころ娘が現れても…。
ポケットから携帯を取り出し時間を確認した。
「やばい、8時過ぎてる!しゃべってる場合じゃない!遅刻するぞ、走れ!」
「オイ、待ってくれよー」
「あいつに怒られるより走った方がマシだぞ」
そういいながら僕はまだ1/4も進んでない通学路を走りながら時速計算で割り出しこう言った。
「ブッダ、昨日は雨も降ってない、いつものショートカットするぞ」
そう言い放つと僕は林の中へ向かった。学校へ行くにはどうしても向こうの橋を渡る必要がある。橋を渡るより林を抜け川を渡ったほうが時間が短縮出来るからだ。もちろんその代わりにリスクを伴うが…
「マジか〜」
予想通りブッダが言う。この林は地元の氏神様の戸隠神社がある。そこを横に突き抜けないと川に行けない。まず胸元まである岩垣を登り、木々を避けながら道なき道を進む。多少の枝や葉っぱの攻撃をくらいながら。その林を抜けると赤い旗がずらりと並ぶ境内に進む。そして狛犬の顔を横目に神様の前を通り過ぎる。
「神様、今日は飛べますように」
振り返ると後ろのやつが早歩きで手を合わせている。僕は、
「大丈夫、未来は変わらない」
と一人で微笑んだ。
次は黄色いイチョウ通り。とっくに旬だが何故かここのイチョウは銀杏が実らない。たとえ実ったとしてもこの匂いでは食べる気はしないのだが。
袖で鼻を押さえながらイチョウの根を避け下って行く。ここを過ぎるとようやく川に辿り着ける。
この辺りは浅い川が二手に分かれているおかげで飛び越えやすい。そして向こうの橋の前でさらにもう一つと合流し大きい一本の川になっている。つまりこの川を二つ飛び越えればショートカットのフィナーレだ。僕は一度立ち止まり、呼吸を整えてた。
最近は雨も少ないせいか大分浅い気がする。
「カバン貸せ」
そういいながら二つのカバンを持ち、いつものように軽く二つの川を飛び越えた。
「大丈夫、行ける!お前もこい」
「オウ!」
顔はもう真剣モード。彼は不規則に体を傾け助走した。
「ピチャッ」
一瞬、右足が少し川に入ったが本人は気にしてないようだ。
「行けた!」
うん。小学生の女の子でも今日の水位なら行けるレベル。一つ目の川は飛び越え前座は終了した。ここからだ、ここからが面白いのだ。そして俺は深く息を吸いこみ先生の様に檄を飛ばす。
「いつもお前は気持ちが足りないんだ!気持ちだ!気持ちで飛ぶんだ!」
ニヤけてた顔が再び真剣モードになった。雰囲気はオリンピック選手並のオーラを醸し出している。彼は一度川の前に立ち足の踏み切る位置を確認した。そして後ろも見ず、いつもより助走をとった。
「チャポン」
こっちからは見えないが、どうやら後ろに下がり過ぎてせっかく飛び越えた一つ目の川に足が浸かった様だ。
それでも彼の集中力は切れていない。両手はこぶしを握ったまま、まだスタート体勢で動かずただ川の一点を見つめてる。まるで彼だけ時が止まったようだ…ただ優しい川のせせらぎだけが鳴り響く…。そして静かに僕の合図を待ってるようだ。
「来い!」
僕の声に反応し、一気に全身の筋肉が動き出す。
彼は全速力でこっちへ向かって来た。
靴からは水しぶきが飛び散りピチャピチャと陽気な音が鳴り響く。
川の手前で歩幅が増え、不思議なステップを踏んだかと思うと、上半身は空へ向かい下半身は飛ばずにそのまま川の中を走り抜けて来た。
ピチャッピチャピチャピチャ、ビッチャーー!
「はははははは〜」
僕は笑いが止まらない。
「おい、笑いすぎだろ」
「ごめんごめんズボンの裾、絞ってやるよ」
直ぐに笑いを誤魔化した。
「マジかー、この靴昨日買ったばっかの新品だったのになー」
「なんだあのやつを履いて来たのか?」
「そうだよ、最悪だよ」
ブッダの脱いだカボチャ色の靴がにじんでる。一瞬、昨日の風景を思い出した。
「悪いがもう時間がない、その靴持ってしばらく走れるか?」
「もーっ、それしかねーんだろー?」
小さく頷く。
「分かったよ、走るよ」
結局、近道しても時間は変わらなかった。
そこから15分は走り続け、校門を通ったのはチャイムが鳴る3分前。さすがに誰もいない。
「あとひと息だ」
僕たちは急いで下駄箱に靴を入れ、スリッパに履き替える。バテバテの足を何とか上げながら階段を駆け上がった。
「ふぅーっ何とか間に合ったな」
2人は汗だくでいつもの教室の前に立った。
いや、正確にはいつもの教室だと思い込んで扉を開け、入った…
その瞬間、チャイムがなり、目の前の異様な光景で圧倒された…


 『クラスの全員が…「碧い仮面」を着けている!』
うわっ!な、なんだ?どういうことだ…?
衝撃すぎて思考が停止した。一瞬で汗が引いた。その時、腰が抜けそうになる僕を誰かが強く背中を押してきた。
「なに教室の入口でつっ立ってんだ!さっさと自分の席に座れ!」
後ろを振り向くと体のデカい大男が同じ仮面をしてる。声的に担任の水口先生だ。
嫌々僕は不気味な教室に入れられた。身体は拒否をするが吸い込まれるかの様に歩かされる。耳鳴りが強く鳴り響き、青ざめた僕を嘲笑う様にじろじろと仮面達が見てくる。今にも全員に襲われそうな感覚だ。足元は歪み教室全体は回り出しているかの様。この異空間な状況が全く理解できないが、とりあえず1番後ろの自分の席まで着いた。
「落ち着け、落ち着け…」
ガタガタ震える足と自分で言う言葉が余計に思考を焦らせ動揺させる。そしてクラス全員の背中が共同意識で何か暗い闇の奥へと僕を誘ってるかの様だ。さらにこの空間を仮面の先生が支配するように喋り出す、
「出席をとるぞ!青山まさる…」
まるでいつものように淡々と出席を取りだした。教室中に仮面先生の声が鳴り響く。
僕はまず3回深呼吸をした。このまま飲み込まれては駄目だ。こんな時こそ強くあれ!それにまだ「夢」の中の可能性だってある。とりあえず、仮面以外の情報を見ることに専念した。
やはり仮面以外、周りは至って普通。窓も左側にあり運動場も見えている。先週やった習字も壁に貼られ、後ろのロッカーにもちゃんと荷物が入っている。どうやら夢ではなさそうだ
という事は現実に起きている状況…なんて事だ…
まだ当然、理解は出来ない。むしろ当たり前だ、理解できるはずが無い。とりあえず教室自体に変化はない事は事実。僕は一つ一つ検証していきいつもの現実をたぐり寄せることにした。

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