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早坂 渚
2023年7月3日 10:00
「ねぇ安? 安は占いって信じるタイプ?」「そう、安なら何となくそう言う気がした。なら、きっと大丈夫だね、私……」「はぁっ、はぁっ、何なんだよこれって! 何で僕はまた追われているんだ……」――警視庁本部「これより、私立世美高等学校殺人事件についての、緊急対策本部会議を開始する! まずは、被害者の特徴の説明を!」「被害者は17歳の女子高生、深瀬ミノ。現場は私立世美高等学校の2階にあ
2023年7月4日 10:00
「はい、指名手配中である中島安は……」30分弱の説明が入り、事件の情報を共有する。その間、固まったようにピクリとも動かず二人は目を瞑ったまま、静かに聞いていた。ここからどのように古谷警部は事件を解決していくのか。一通り説明が終わると、一瞬間ができた。すると、会議室中にガサツな声が響き渡る。「大体終わったようだな。じゃあ、そろそろ高校生を探すとするか」左手を伸ばしながら合図をし、
2023年7月5日 10:00
「そういえばあんちゃん、名前なんていうんだい?」「あっ、日野悟と申します!」「そうかい、頼むよ。因みに隣のこいつはあんちゃんと同じ捜査一課だよ。名前、教えてやんな」「あっ、捜査一課9係の飯田赤です。よろしくお願いします」見た目以上に小さくなって低姿勢で挨拶をする赤。言ってしまえば色白以外、どこにでも居そうな特徴のない顔だ。「やはり気づかんか。推理が苦手なやつは警察なんて勤まらん
2023年7月6日 10:00
学校から逃げ出した安は、春留神社の縁の下にあった服に着替えた。自分で用意した訳でもないTシャツ。サイズがぴったりなのが何より違和感だった。しかし、靴は用意されていない。砂を出来るだけ払い落とし、メダルに描かれた水族館を目指す。(やばい……そこら中に警察がいる)既に神社から外へ出る事すらままならない状況だった。神社に用意してあったもうひとつのアイテムが、水泳バッグだった。誘導
2023年7月7日 10:00
安は水族館のスタッフの目を盗み、手紙に書かれた指示通り館内の裏側へ侵入していた。「はぁ、はぁ、ようやく見つけた。メダル……」輸送された魚を一時的に移す予備水槽の中にあるメダルを手にする為、急いでジーンズを脱ぎ捨て、躊躇なく飛び込んだ。白く濁った水槽の中を、ひたすら潜って行く。すると、水中で何かに脹脛を噛まれ激痛が走る。嚙んだのは凶暴なピラニアだった。さらに、血に誘われるように一
2023年7月10日 10:00
「さぁ、信者の皆様、いよいよです!」ジッグラトの正面には、彫刻で5つの神、天の神”アヌ”、地球の神”エンリル”、水の神”エンキ”、月の神”ナンナ”、最後に太陽の神”ウトゥ”の壁画が彫られていた。その両脇から、馬車とともに、角の生えた不気味な山羊の被り物をした4名の幹部が松明を抱え登場した。教祖は天を仰ぎながら、牛の被り物をした人間の背後に立ち、縛られていた縄を解く。「もう、これ以上
2023年7月11日 10:00
大ホールの巨大モニターでゲームの様子を観戦する信者たち。安は座り込んだまま一切抵抗することはなかった。幹部たちに再度牛の被り物を被せられ、連行される所でモニターは消された。ゲームが終わり、たった一人生き残った前代未聞の儀式に歓喜する信者たち。「遂に彼は本物となったぞ!」両腕を縛られた状態で山羊の被り物をした幹部たちに連れられ、開かれた門から再び安が登場する。数千人の信者たちの拍
2023年7月12日 10:00
「とにかく時間がない! 悪いが私の車で移動する、乗れ!」三輪警部補は安を後部座席に乗せ、警察庁を出た。「少し手荒いが、被害が拡大する恐れがある。悪いがこれからたくさん話してもらうぞ?」「……気付かないんですか?」「なんだ、急に…………待て!」座席の位置に違和感を感じ、急ブレーキをかけ止まる。タイツのまま車から降り確認するが、右前方にあるはずの傷が無い。「私の車がすり替えられ
2023年7月13日 10:00
三輪警部補は安に誘導され、公園の隅にある駐車場に車を停めた。「鍵を開けてください! 早く!」急いで鍵を開ける三輪警部補。ドアが開き、少女が安の隣にかけ乗った。「お前は……ミノの妹⁈」「初めまして、三輪さおりさん。妹のサヤです」「どういう事だ。説明しろ!」三輪警部補は、全く想定していなかったサヤの登場に驚いた。「説明している時間はありません。今から要求する事を呑んでもらい
2023年7月14日 10:00
「イナンナを壊す事が我々の使命です。それは今も変わりません。ミノは、一人でイナンナを壊そうとし、殺されました。イナンナはそれだけ人類史が変わってしまう程の恐ろしい人工知能を持った凶悪な未来透視システムなんです。だから僕は、母の透視を頼りに、幹部としてサニー新道教に在籍しながら、『犯人はヤス、』の存在を待っていました。中島安という高校生が、ミノの影響で、5つのメダルを用意し現れ、イナンナの光を浴びス
2023年7月18日 10:00
「一体、どういう事かね?」「イナンナは何者かによってサニー新道教から盗まれました。そして、我々の特別捜査チームがこの度、発見したのです!」「どこにあったというのだ!」「祭りでしか使用する事のない、神輿の中です。そして……中島安は、イナンナシステムを考えた工作員の実の息子なのです!」ざわつく同席者たち。「……なるほど。つまりは、イナンナを息子の安に取りに行かすのが真の目的という事
2023年7月19日 10:00
夜の街を歩く警察手帳を失った古谷警部。振り返ると、監察官が50メートル先に追ってきている。古谷警部は『Neo Comer」というお店へ入った。「あら〜~いらっしゃ~い! あれ!? 古谷んじゃない?」「おう、久しぶりだな。元気か?」「ヤダ〜、ちょっとみんな〜! 古谷んが来たわよ〜〜、全員で食べちゃいな~~!!』「「キャ〜〜!!」」ド派手なメイクをしたオカマに囲まれ、偽物の
2023年7月20日 10:00
「INGの一員だと聞いたからには、いくら母親とはいえ、そのセリフにも裏があるとしか思えない。サヤと安は我々警察が保護する」(どこまでがイナンナに操られた思考なのか分からないからな)悟は冷静にシズエに訴えた。「この状況を見て、何も疑問に思わないのね。呑気な警察は。私が一人で、どうやってこの洞窟に入り、どうやって入り口の岩を塞いだのかしら?」「確かに……」「さっきも言った通り、イナ
2023年7月21日 10:00
「これが儀式の合図。これからあなたたちは、あそこにあるお酒を飲み、記憶を呼び覚ますのよ」そう言って3人の縄を解いた。「もしこのまま飲まなければ、水が流れ続け、全員死ぬ。あなたたちは飲むしかないのよ。一人は変わらずに無心となり、もう一人は透視能力が開花する。そして、最後の一人は破滅の記憶を思い出し、あの矛を手に取る。争うのよ、これから3人で。いいわね?」「まだ間に合う! 逃げる方法はない