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【序、村木嵐さん『御庭番耳目抄』(独り言多めの読書感想文)】



 徳を積むという言葉がある。善行を重ねることで人として大切なものを育てていくという観点。
 徳を積ませてやるという言い方がある。『こんな夜更けにバナナかよ』という大泉洋主演の筋ジストロフィー患者を中心に据えた映画では、患者自身が「身の回りの世話をさせてやってる」と豪語する。印象に残っているのは「はいはい」と応える周りが、呆れながらも皆楽しそうだったこと。
 足元に落ちたものすら拾えないロボットを介護施設に置くと人が寄ってくるように、人には役に立ちたいという根本欲求がある。寂しさを根に巣食う思いは、そうして足元を揃えるため、バランスをとるために動く。
 
『まいまいつぶろ』を覚えているだろうか。ここでも過去記事にしたことがあるのだが、将軍でありながら最弱の、憧れ【点A】とないわー【点N】の異常値を叩き出すお方、Ieshige Tokugawaを中心に据えた物語で、無口な大泉洋の代わりに忠光が通訳を務める。
 今回取り上げる『御庭番耳目抄』は『まいまいつぶろ』の裏話で、御庭番の視点で見えた家重周辺の人たちの物語。


ちゃんと『まいまいつぶろ』って入ってる。


御庭番イメージ(『銀魂』より)


 
 家重本人が話さない分『桐島部活やめるってよ』ばりに周りの声で家重本人の人物像を浮かび上がらせるホログラム感が強い。いや違うな。家重との接点を元に構築される人間関係においての苦労や喜び、将軍の前ではないからこそ聞ける生の声を収録したもので「普通ならこうだけど、この立場だとこっちが正しい」というようなそれぞれ向き合っていた問題、そこを通じて得た喜びが描かれている。揃いも揃ってイイヤツばかりだからちょっと聞いてってよ。ちゃんと読書感想文できてるか分かんないけど頑張るから。
 かく言う私自身、忠音を思い出し、久しぶりに『My Way』聞いて再び号泣するという学習能力の無さを披露したばかり。終わったかに思えた花火にもう一度火をつけるような、一年越しの続き、よろしければお付き合い下さい。
 

【目次】
『まいまいつぶろ』より(2023.10.4~投稿)
・序

1、 友として
2、 妻として
3、 家臣として
4、 男親として
・文系による読書感想文~村木嵐さん『まいまいつぶろ』『阿茶』を添えて~
・付録:ニコイチ

『御庭番耳目抄』より
・序(←今ここ)
5、悪役として
6、息子として
7、無口な夫の妻として
・付録:二つ名
  ※付録は作者による作品を通じた自分語りです。





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