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『またうど』読書感想文、序


 アドバイスをしない方がいいと言うのは、人の上に人が作られていないためで、良かれと思って口にしたことが「よかれ」として届くばかりでないためだ。言い方は元より、例えどんなに言葉に気をつけたところで、受け取る側に通じなければそれまで。ふと『村上海賊の娘』の〈人ひとりの性根を見くびるな〉を思い出した。
 ここで大事になるのが普段の関わり方。利害関係なくかわしてきたやり取りであり、仕事だろうと何だろうとすっ飛ばしていい謂れはない。
 
 この度取り上げるのは村木嵐さん『またうど』。またうど以前にまたかよだが、いや作者登録してあるから新刊情報として出てくる訳で、また表紙もアップされていない内から予約してやっと届いた訳で。
 本書は『まいまいつぶろ』『御庭番衆目録』に描かれた家重の世、そこから続く家治の世を舞台とした老中田沼意次の話で、「またうど」とは「愚直なまでに正直な信の者」を指す。
〈当たり前に思えることに疑いをもち、そこから問い直せ〉としたのは『価原』を著した三浦梅園。これは本書内に記述されているもので、田沼意次と言えば賄賂に塗れた人物としてインプットされていると思うのだが、本当にそうだったのかというスタンスで描かれたもの。
〈人ひとりの性根〉それは「そういうもの」としてフォーマット化してしまえば決して日の目を浴びなかったもの。一人として同じ生き物はいない。だから〈見くびるな〉というのは、何より人と関わり合うことで生かされているすべての人類に言えること。
 父は600石取りの御小納戸頭取。そんな意次の栄達と晩年を描いた物語、よろしければお付き合い願いたい。
 
 

 
・序
・骨格
・商人は人たらし
1、まいないつぶろと呼ばれた男
2、600石の妻
・参勤交代では寄り道なんてできなかった
3、おみくじにお前のオールを任せるな
・〈付録〉御役を果たす
 




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