2022年4月の選歌
「久し振り」と手を振る友のブラウスに春風吹きてふわりとふくらむ
楽満眞美
二歳児の頬はマシュマロ我の手に吸い付きやがて溶ける気のする
鵜川登旨
春なれどすべてが色褪せ見ゆる今彼と過ごせし日々のみ鮮(あざ)やぐ
山下ふみ子
草根っこ綱引きすれば突然に尻餅ついた我の勝ちなり
藤代敏江
レンギョウを腕に抱えて急ぐ人の後ろ追いかくる黄金の蝶
楽満眞美
母は逝き賀茂の流れを泣きながらうちは走った さいなら母ちゃん
沖 葉子
そよ風にひらひら揺れるパンジーはワルツを踊る乙女の如し
伊藤美枝子
柔らかな春の日差しに包まれて赤子は眠る四肢を伸ばして
筒井みさ子
朝ごとの雨の恵みか色ふかく庭の紫陽花いま盛りなり
原 葉
柔らかき毛の感触の残る手でゴン太の写真をひしと抱きぬ
山下ふみ子
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