2022年6月の選歌
探し物探す時には透明で見えぬものらしひょいと現る
藤代敏江
隣り街に『笛吹童子』を観に行きてヒャラリヒャラリコ野道を帰りぬ
岡まなみ
砂浜におじさん顔(がお)のアザラシがどってり寝そべる平和なハワイ
大室やよい
霞みゆく吾あの青春の幾齣こまか見ゆるがごとき『ローマの休日』
楽満眞美
右、左、飛び散りぬぎたる子の靴もいとしく揃えて我が老いの春 柴田和子
スコールの激しき音にジョギングの夫を案じてタオル出しおく
筒井みさ子
パタパタと走り回れる孫怪獣 高齢犬は居場所を無くす
伊藤美枝子
「ありがとう」義母の言葉が嬉しくて足取り軽く夕餉の支度
六甲もこ
憂愁を帯びしメロディーに誘われて『ゴッドファーザー』幾度も見たり
筒井みさ子
彼の手を握り返せば脳内に映画の筋など入る余地なし
鵜川登旨
春風は海の匂いを運び来て吾が残生にまだ夢のあり
今森貞夫
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