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裏庭にマンゴーの実の熟れゆくをマイナバードと競いて待ちぬ 筒井みさ子 途切れずに…
黒焦げのバニヤンの木の声がする泣いてたまるか再び芽吹くさ 関本なつ 「気をつけて」車道の…
梅雨晴れに四(よ)枚のシーツを干し上げてひときわ旨し今朝のコーヒー 鵜川登旨 デジタル…
つづれ折の道を比叡へ登りおれば光る湖面の遠ざかりいく 筒井みさ子 カネオヘの海を見下ろす…
荷を運び匂い残れる娘(こ)の部屋に孫と遊んだパズルのひとかけ 伊藤美枝子 焼き立てのクッ…
床ずれにならぬようにと波うてるベッドに夫は海の夢見るやも 岡まなみ 純白の雄鶏庭に通…
目覚ましを止めて楽しむ温もりよチェーン付けたるバスの音聞こゆ 森田郁代 施設ではペットも飼えず物言わぬ母は煤けたぬいぐるみ抱く 六甲もこ 柔らかき光に溶けし雪だるま春を迎えに行ってしまった 小島夢子 庭からの菜の花摘みて御浸しをほろ苦い味の春の訪れ 伊藤美枝子 日本から島に戻りて夕凪の海にたっぷり抱かれて泳ぐ 大室やよい 太陽のシャワーたっぷり浴びながら一心不乱に猫毛づくろいす 藤代敏江 陽だまりに新聞読みいる夫の背が小刻みに震う訃報ペ
帰省せし子ら帰りたる家の中に時計の音がゆっくり響く 森田郁代 人気(ひとけ)なき実家をひと…
傘を手にぽつんと一人我を待つ母を照らしたバスの窓明かり 六甲もこ 返信を待つ親の気など知…
金色の午後の光を編み込めばなお温かい靴下となり 藤代敏江 幼子はあまたのおもちゃに目もく…
グラスにはルビー色した紫蘇ジュース香る宝石一気に飲み干す 山下ふみ子 宮詣りに眠りし孫は…
母逝きて残しし句帳に読み耽り我が知らぬ世界垣間見えたり 山下ふみ子 葬式には参列をせん四…
トマト苗まだまだ支えは要らないとうぶ毛の光る足でふんばる 藤代敏江 亡父(ちち)に似た翁…
探し物探す時には透明で見えぬものらしひょいと現る 藤代敏江 隣り街に『笛吹童子』を観に行きてヒャラリヒャラリコ野道を帰りぬ 岡まなみ 砂浜におじさん顔(がお)のアザラシがどってり寝そべる平和なハワイ 大室やよい 霞みゆく吾あの青春の幾齣こまか見ゆるがごとき『ローマの休日』 楽満眞美 右、左、飛び散りぬぎたる子の靴もいとしく揃えて我が老いの春 柴田和子 スコールの激しき音にジョギングの夫を案じてタオル出しおく 筒井みさ子 パタパタと走り回れる孫怪獣 高