当事他者探Qその3

 当事他者の存在の前提に当事者がいるように、当事者にも当事他者がついてまわる。当事者と当事他者とは、切っても切れない関係いわば「共同存在」という言い方ができるかもしれません。

 「共同存在」は、哲学者ハイデガーの『存在と時間』に由来します。ハイデガーは、「現存在」(とりあえずのところは「人間」の意)はすでにつねに「他者との共同存在」であるとして、次のように書いています。「現存在の存在には、他者たちとの共同存在が不可欠の契機として属している」、さらに「そのつどの事実的な現存在が他人のことなど気にせず、彼らなど要らないと思っていようとも、あるいはいてほしいがいないという場合でも、現存在は共同存在というかたちで在る」と。障害当事者と介助者との関係を思い起こします。

 そうした在り方は、「当事者と当事他者」にも当てはまるのではないか。すなわち「当事者はすでにつねに当事他者との共同存在として在る」。当事者がいなければ当事他者が存在しないのはもちろんのこと、当事者も当事他者がいてはじめて当事者として存在するとも言えます。

 「現存在と他者」を「当事者と当事他者」に置き換えることは、取りも直さず「現存在」は「当事者」と言っていることに等しいです。先ほど「現存在」を「人間」と解しましたが、ハイデガーの独特の用語のなかでも、とりわけ有名な「現存在」について見ていくことで、「当事者」について考えましょう。

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