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非当事者研究

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2021年9月の記事一覧

非当事者研究その6

 「当事者」に関わる人を表す適切な言葉の条件には二つあると考えています。

 一つ目の条件は、「当事者」という言葉を想起させる言葉です。「支援者」から連想するのは、「当事者」よりも「被支援者」であり、受動的なイメージから免れないでしょう。そのほかにも「伴走者」がありますが、「当事者」という言葉を連想しにくく、むしろ「独走」あるいは「暴走」しかねないから「伴走者」が必要だとされかねません。

 「当

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非当事者研究その7

 「当事者に関わる人」を表す適切な言葉の条件は、まず「当事者」を想起させること、次いで差異も含むことです。

 とりわけ差異を考えるのは重要です。「非当事者」という言葉は、「当事者に関わる人」も、関わらない人も、敵対する人も、無関心な人も、みなすべて一括りにして名指し、積極的に否定してしまうからです。こうした問題意識からすれば、同様に、「当事者」と「当事者に関わる人」とを一括りにして差異をなかった

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非当事者研究その8

 「当事者に関わる人」とは、「味方するよそ者」です。「味方するよそ者」を、「当事者」を想起させ、差異を含む言葉に言い換える前に、いま一度「当事者」について整理します。

 「当事者」は、一方で障害者や女性といった属性に該当する人、すなわち「事に当てはまる者」として使われます。他方で「事に当たる者」としても使われます。つまり行為としての「当事者」です。

 たとえば上野千鶴子さんは『ケアの社会学』で

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非当事者研究その9(終)

 「当事者に関わる人」は「非当事者」ではなく、「当事他者」である。これが「非当事者研究」の結論です。しかし「当事者」にはまだ課題があります。それは翻訳の問題です。

 「当事者」は翻訳できない言葉だとよく言われます。英語には、「『当事者』を一語で表現する単語がない」(上野千鶴子)、「『当事者』という言葉のもつ日本語の真剣さ、重さ、方向性にぴったりあてはまる単語が、どうしても見つけられない」(北原み

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