非当事者研究その7

 「当事者に関わる人」を表す適切な言葉の条件は、まず「当事者」を想起させること、次いで差異も含むことです。

 とりわけ差異を考えるのは重要です。「非当事者」という言葉は、「当事者に関わる人」も、関わらない人も、敵対する人も、無関心な人も、みなすべて一括りにして名指し、積極的に否定してしまうからです。こうした問題意識からすれば、同様に、「当事者」と「当事者に関わる人」とを一括りにして差異をなかったことにしてしまえば、息が詰まった関係を繰り返してしまいます。差異を前提にした関係が必要です。

 「当事者」を想起し、差異も含む言葉を探るヒントになるのが、「環状島」という比喩を使って非常に示唆に富む当事者論を展開した宮地尚子さんによる「当事者に関わる人」の位置づけです。

 宮地さんの「内/外という分類」と「味方/敵という分類」を用いると、「当事者」は「内・味方」、「当事者に関わらない人」は「外・敵」、そして「当事者に関わる人」は「外・味方」という「ずれを起こす部分」に位置づけられます。つまり「当事者に関わる人」の特徴は、「『味方』ではあるけれども内側の人間ではない」という「微妙な立場」にあり、これを認識することで「当事者に関わる人」が離れていく不幸を減らせるのではないかと提案します。

 「『よそ者』だけれど『味方』という立場」すなわち「味方するよそ者」という簡潔かつ的確な表現が、「当事者に関わる人」を適切に表す言葉のヒントです。

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