お散歩のすゝめ
昔から、散歩が好きだった。
時々、思い立って散歩へ行く。
天気が良くて、風がない日が好ましい。だけれども、風の強い日は家に帰ったときにいつもよりもほっと出来るので、それも悪くない。雨の日だって、いつもより澄ました顔をした街や、水がたまった田んぼに広がる波紋が、鬱々とした気持ちを柔らかく包んでくれる。
散歩をするのは、なかなか難しい。
まず、玄関から出ることに、一苦労する。
散歩を楽しむのに重要なことは、目的を持たないこと。足の向くまま、気の向くままに歩かなくてはいけない。だから、目的を持たずに家を出なくちゃいけない。
これが、とても難しい。
引きこもり体質の人間にとって、目的もなく家を出るのはなかなかのハードルだ。ちなみになにか約束や予定がある外出は、精神的な拘束が強いので、それもそれでハードルが高い。
大切なのは、思い切り。えいやっと、扉を開ける。
そうすると、色々とわかることがある。意外と、風が温かいこと。思ったよりも、空が青くて高いこと。田んぼのあぜに、若い芽がぽつぽつと頭を出していること。
外に出るのは、思ったよりも悪くないこと。
それから、今日行く方向を決める。
東西南北、どちらへ向かうか。目的地は設定しない。小さなカバンに、財布と携帯だけを入れる。できるだけ、身軽が望ましい。
イヤホンを耳に突っ込んで、流すのはお気に入りの音楽。気だるげだけれども、最高にご機嫌な音。勝手に足が進んでしまうような、そんなリズムを探す。
あとは、歩く、歩く、歩く。
ときどき、足を止めて、あぜ道を覗き込む。木を見上げてみる。気の早いたんぽぽや、シロツメクサを探してみる。日当たりの良い場所、すこし薄暗い場所、猫がいそうな場所。
どんぐりが落ちてたら、思わず拾ってしまう。まるまると、太っているのが好ましい。帽子をかぶっているのもおかし。松ぼっくりは、泥のついていない開いていないものを。数日部屋に置いておくと、綺麗に開く。
それから、猫じゃらし。
みつけたら、良さそうなものを一本取って、ふりまわす。
手を揺らすと、ねこじゃらしが揺れる。
その動きが、胸を高鳴らす。
まるで、六歳の女の子。
でも、思い出してみると、おさないころはなにもかも楽しかった。
落ちているどんぐり一つ、綺麗な紅葉一枚。
それだけで、驚くほどに心がおどった。
こんこんと、心臓の泉から、たのしさが湧きだしてくる。そんな感覚。
散歩は、おさない目線がなによりも楽しい。楽しさに必要なのは、新鮮な目線じゃないかと思う。それは、なによりもクリエイティブなものなのかもしれない。
家に帰って、着ていたニットにひっつき虫が着いていたら大成功。
散歩、楽しい。
おすすめです。
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