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消えきれなかったあの日(後編)

冷たい何かを食べ終え、一度部屋へと戻った。

ずっとズキズキして気になっていた左膝の具合を確認した。
スパッツに血が滲んで引っ付いていた。

ネットカフェで一晩を明かす所持金も無かったため、ギリギリまで滞在しネットカフェをあとにした。

そして終電の電車に乗り、結局家の方向に向かってしまった。

「どうしようかな」

電車は私の意思など関係なく家へと近づいていく。

日はまたぎ21日になり、最寄り駅へと戻ってきた。戻ってきてしまった。

家に帰るなんて選択肢などなく、行く当てもなかった。

とりあえず海辺の方へと歩いた。

さっきまで雨が降っていたとは思えなかった。

グチャグチャな気持ちとは裏腹に、空は雲一つなく星が綺麗に輝いていた。

家に帰りたくなかった私は海辺の辺りをウロウロし続けた。

そして決心した私は家に帰ることにした。

そう、二度と帰らないと決めた家に。

そして家の前に着いた。

家の明かりがついていた。

「そりゃそうか。息子が家出したのだから」

家のドアに行くまでの足取りが重い。

怖い怖い怖い怖い

そして家のドアを開けた。

母がそれに気付き、泣きながら「お帰り」と言われた。

私は無言の返事をした。

父が私の歩き方の異変に気付き、私に問いかけた。

私は左膝が怪我していることを話した。

そしてお風呂に入った。

湯船に浸かりながら、あがった後何を話そうか必死で考えた。

30分程湯船に浸かっていた。
すると父が「早くあがっておいで」と優しく話しかけてきた。
「うん」と返事をした。

あがると膝の怪我を心配されたが、大丈夫と言い本題に入った。

母が泣きながら家出した理由を聞いてきた。

私は自分の中の膿を、頭で考えて捻りだして出来る限り自分の言葉で吐き出した。

すると涙がボロボロ溢れ出してきた。

自分の中にあったものは出来る限り吐き出した。

こうして私の消えたかった、消えきれなかったあの日が終わりを告げた。

今もたまに消えたい、消えてしまいたいと思うことはある。

死にたいではなく消えたいと

おわり

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