消えきれなかったあの日(中編)
海沿いの道をただ一心に歩いた。
夕日が水面に反射して綺麗だった。
「何かを綺麗だと思える心は、まだあったんだ」
潮風を浴びながらそう感じさせられた。
少し歩くと、私と同年代くらいの4人組の男性が岸辺で遊んでいた。
これが青春なんだろうと感じながら顔見知りだと嫌だったので、岸辺とは反対側の道をこっそりと通った。
19時前に以前私がつぶやいた、サイクリングで訪れた場所に着いた。
夕暮れが綺麗で、なんとも儚かく感じ思わず写真を撮ってしまった。
しかし、反対側の空はどんよりとした黒い雲に覆われていた。
ひとまず私は喉の渇きを癒やしたい。
そう思い、自販機で缶のホワイトソーダを買い、近くのベンチに腰掛けた。
飲むと甘酸っぱい味が口に広がった。
「甘酸っぱさなんて求めてないのに」
そう思いながら天気予報を見ると、このあと雷雨になる予報だった。
もちろん傘なんて持っているはずがなかった。
持っていたとしても傘で凌ぐことなんてできない。
濡れたくなかった私はどこかに移動しないといけないと感じ、ホワイトソーダを急いで飲み干し移動することにした。
再び電車に乗るため、最寄りの駅まで歩くことにした。
向かう途中、何カ所も公衆トイレはあったが無視して駅へと足を進めた。
今思えば、結局「消えたい」よりも「日常」を求めていたのかもしれない。
そして駅に着いた私は切符を買い、改札を通りホームで電車を待った。
終点まで乗った。
終点の駅はそこそこ発展している駅で、多くの人がいた。
日曜日の夜だから当然のことだろう。
そして駅の近くのネットカフェに入ることにした。
利用するのは初めてだった。
中に入るとセルフレジで一瞬戸惑ったが、なんとか受付を終えて部屋の番号が書かれた紙が出てきた。
私はその部屋へ向かった。
そして荷物を置き、ドリンクバーでジュースを入れて部屋へ戻った。
「これからどうしようか。所持金にだって限りがあるから、永遠にここに居られるわけでもない」
結局消えたいと思っているにもかかわらず、雨を凌ごうとしたり汚れたくなかったり、自分自身でも訳が分からなくなっていた。
死ぬ勇気なんてあってはダメだが、それがなかったから消えたいと思ったのかもしれない。消えたいなんて言葉で表現したのかもしれない。
自分の気持ちがグチャグチャなまま、ドリンクバーの隣にあったアイスクリームを何となく食べた。
味は分からなかったが、口の中に何か冷たいものが存在していることは分かった。
ふと窓の外を見ると予報通り、雷雨が外の人々を襲っていた。
つづく
この記事が参加している募集
もしよければサポートお願いします。頂いたサポートはクリエイターとしてレベルアップするために使わせて頂きます!!