自分の可能性は自分で決めてほしい。【ヤマト電機】
今回は鹿島朝日高等学校・鹿島学園高等学校で、ヤマト電機株式会社の代表・中嶋冬彦さんにご登壇いただき、ハローライフ(様々な大人に出会い、人生の話をきく企画)を実施しました!
この記事では高校生に働く情熱を伝えた本プログラムの一部をお届けいたします。
担当はハッシャダイソーシャルの「森本」です。
電設資材の専門商社
勝山:本日はゲストに、ヤマト電機の代表・中嶋冬彦さんに来ていただいています。
中嶋さん、まず簡単な自己紹介と、ヤマト電機はどんな会社なのか、簡単に伝えていただいてもよろしいですか。
中嶋さん:では簡単に紹介させていただきますね。ヤマト電機は私の父親が創業した会社で、私は2代目の社長です。電設資材の専門商社で、年商は次の3月で280億円を予定しています。
従業員数は約400名で、拠点は関東を中心に国内34か所、海外ではインドネシアとベトナムにも会社をつくっています。
扱っている「電設資材」というのは、みなさんも身近なスイッチやコンセント、エアコンや照明といった電気工事を伴う設備材料のことで、目に見えるものから壁や天井の内側に入っているものまで扱っています。
例えば家を建てたいと思ったとき、みなさんはハウスメーカーと話をすると思いますが、 その裏側にはたくさん専門業者がいます。
例えば電気工事会社さん、パナソニックや東芝や三菱などのメーカー。これらメーカーさんから商品を仕入れて電気工事会社さんに売るのが私たちの仕事なので、私たちはみなさんからは見えないポジションで仕事をしています。
勝山:「専門商社」に馴染みがない人もいると思うのですが、基本的には企業間のやり取りをする役目ということですか。
中嶋さん:そうですね。ですから「照明器具ならこのメーカー、エアコンならこのメーカー」と、良いところどりをしてお客さんに提案するわけです。
消費者の方が全部を選ぶのは大変ですよね。だから専門知識を持った営業マンたちがいろんなメーカーのものを組み合わせて提案するのが商社です。
だから「提案する力」がすごく大事で、 お客さんから「ヤマト電機で買いたいね」と評価されるために提案力を磨いているわけですね。
父親の病気がきっかけ
勝山:今日参加しているみなさんは、キャリアや進路で悩んでいる方も多いと思いますが、中嶋さんは高校卒業から大学進学についてはどんな選択があったのですか。
中嶋さん:その辺を真面目に話すと、18歳のときに父親が、がんで亡くなったのですが、その直前、高校2年の冬に母親から、父親が入院して大きな手術をするから「もしかしたらもう話ができなくなるかも知れない」と言われて、それで父親と話したとき、母親のことを「なにかあれば頼むよ」と言われたんです。
勝山:18歳で・・・。
中嶋さん:その言葉がめちゃくちゃ重くて、そこで初めて「勉強をしよう」と。親を安心させなくちゃいけないと猛勉強したんです。
でも、本当にバカだったので大学は受からなかった。浪人して、また猛勉強しましたが、受験前の11月に父親は亡くなってしまって。でも、周囲の支えもあり最後までやりきり、希望していた以上の大学に受かったという感じです。
だから、父親の病気という大きな出来事が無かったら、大学へ行っていないかもしれないし、キャリアも全く変わっていたと思いますね。あのきっかけがあったから変われたんでしょうね。
勝山:大学を目指す選択をしたのは、やはりお父さんの会社を継ごうという想いがあったからでしょうか。
中嶋さん:いや、それは全然考えていなくて。頭が悪かったので、とにかく勉強をして、なにか結果を出そうとしか考えていなかったですね。
「使命」と「選択」
勝山:大学を卒業して、一度就職されているんですよね。
中嶋さん:松下電工という会社です。松下電工と松下電器産業が合併したのがいまのパナソニックですが、僕は松下電工に入社して、名古屋で営業をやっていました。
勝山:その選択には、どんな背景があるんですか。
中嶋さん:それがね、今日のハローライフの「進路を自分で決めていこう」という趣旨にマッチしていないので、話していいのかなと思うんだけど・・・そもそも父親の遺言は「お母さんのことを頼むよ」で、「会社のことを頼むよ」とは言われていないし、父親の会社に入る気も継ぐ気も全くなかったんですよ。
勝山: はい。
中嶋さん:なかったんだけど、父の死後に恥ずかしながら会社でお家騒動が勃発して、結果的に母親が社長を務めることになっちゃってね。当時、僕は大学3年で、大学院進学も考えていたのですが、そんなごたごたがあったので、母親から「早く就職してくれ」という話になって、それで急きょ就職活動をしなきゃならなくなったんです。
それで、この業界で一番強いメーカーが松下、今のパナソニックだったので、急きょ松下の入社試験を受けて入ったんです。
勝山:もう、ドラマみたいな話ですね。
中嶋さん:だから全然、自分で「選択」はしていないので・・・。
勝山:いや、こういうお話は本当になかなか 聞けないし学びになります。
僕たちは「Choose Your Life!」を掲げて、人生を自分で選択しよう、自己決定を持とうという想いを全国に届けてサポートしていますが、生まれた環境によっては使命のようなものがあり、そこでどう選択して切り開くか、という状況もあるわけですよね。
中嶋さんの場合は、自己決定・自己選択ではないかも知れないですが、使命感を持って、置かれた環境でどう未来を切り開くかをまっとうされた。まさにハローライフに繋がる話だと思います。
自分を見続けてくれた人たち
勝山:結果として中嶋さんは、働くことへの気持ちも整理できない中で就職されたわけですよね。葛藤や壁にぶち当たることはなかったんですか。
中嶋さん:僕は入りたいと思って会社に入っていないので、会社側からするとすごい迷惑なんだけど(笑) やっぱり最初は相当モメていました。
でも、名古屋に配属されてからはお客さんや同僚、上司たちとの出会いがあって変えてもらえたのが、いま思ってもすごくありがたいなと。
勝山:どんな変化が生まれたということなんですか。
中嶋さん:そうですね、名古屋ってすごく「閉鎖的」と言われる地域で、なんだか入り込めない雰囲気が強かったんですけど、それでも、ずっと僕のことを見てくれている人たちがいたんですね。
僕が最初に配属されたのは200人くらいいるフロアで、配属された7月から9月末くらいまで、毎朝30分くらいかけてフロアを掃除していました。そういうのを見てくれている人がいたんです。
閉鎖的といわれていたけど、「あ、こいつ、こっちの世界に入れてあげよう」と思われると、すごく温かい人たちなんですよね。お客さんもそうで、厳しくもあり優しくもあり、いろんなことを教えてくれて、それで僕もカドが取れたんですね。
遠慮していたら会社は潰れる
勝山:そこからどういうきっかけでヤマト電機の社長に?
中嶋:3年勤めた頃、2008年にリーマンショックが起きたんですね。景気がどーんって落ち込んで。それで、当時ヤマト電機の社長をやっていた母親から相談の電話が来ることも多くなって、なんか苦労させているなと思っていたところ、2008年10月頃に母親からはっきり「帰って来て(ヤマト電機に)入ってくれ」と言われました。
その時に、父親の「(母親のことを)頼むよ」という言葉と繋がって、ああ、この頼みは受けないといけないわ、と。それで決めました。
勝山:それってプレッシャーもあるし、いろんな声も出ますよね。
中嶋:2009年にヤマト電機に入社して、当初は下からキャリアを作っていく計画で営業所の配属になりました。でも、リーマンショックの後で、想像以上に業績も社員の士気も落ちていた。このままでは会社がつぶれちゃうんじゃないかと思って、だったらもう、俺にやらせてくれと。業績挽回のために指揮を取り始めて。
当時はまだ26歳で、周りはほぼ年上でしたけど、ヤバイと思っていたらプレッシャーは関係ないんですよ。遠慮していたら会社は潰れるし、潰れるくらいならガンガンやるしかないと思っていたから。
勝山:「もうやるしかない」という。
中嶋:それで指揮を執り始めて、なんとか業績もV字回復し始めたので、その翌年の2010年6月に27歳で社長になりました。
「学歴」が助けになるときもある
勝山:中嶋さんの学生時代から社長に至る歩み、何度も鳥肌が立つような感動がありました。今日、このお話を聞いてくださっているみなさんも、まさに進路やキャリア、学校生活で悩み、課題を感じていると思います。
そこでぜひ、チャットに質問をしてもらって、中嶋さんに答えていただこうと思います。
あ、さっそく来ているので読み上げますね。
質問「中島さんは学歴というものに、どのくらいの重要性を感じていますか」
中嶋: 「学歴なんて関係ない」で全然いいと思うんですよね。だから、学歴重視の悪いところを語ったほうが良いかも知れないのですが、あえて僕は「学歴があって良かったこと」をちょっと話したいなと。
勝山:それ、めっちゃ聞きたいです。
中嶋:いまうちの会社は、 インドネシアとベトナムにも会社を出しているのですが、最初は相手先の国になんの繋がりもありませんでした。だから、現地でなんらかのコミュニティの輪に入りたいわけです。
それで、僕は早稲田大学出身なのですが、同じく早稲田出身の人たちが集まる「稲門会」というOB会のようなものがあるんです。慶應大なら慶應三田会という大きな集まりがあります。
そういう大学出身者の中には世界へ飛び出した人がゴロゴロいるので、そのコミュニティに入れたことで、全然知らない国でも知っている人たちと繋がることができました。それがこの大学に入って良かったと初めて思った瞬間でしたね。
勝山:「繋がり」ですよね。
中嶋:そう。あとは大きい大学なので、しょうもないやつもいれば、バケモノみたいなやつもいます。そういうバケモノみたいなやつに出会えたことは良かったなと。
例えばソフトバンクの孫正義さんはコロンビア大学を出ていたり、楽天の三木谷さんはハーバード大学。そういうバケモノ級の人ってやっぱりそれなりのところにいる事実は否定できないじゃないですか。こうしたお二人にも負けないような、次世代を担うポテンシャルのある人たちと出会える確率が高いというのは、名声のある大学ならではと思いますね。
早く就職すれば、早く「気づける」
勝山:逆に、早い段階で、例えば高卒で就職するメリットってなんでしょう。
中嶋:今は「リスキリング(学びなおし)」が注目されていますよね。早く就職するメリットは、とりあえず社会に早く出ると、早い段階で「足りないもの」が分かることですかね。
「そうか、これが足りないのか」って分かれば、そこで学びなおしをすればいい。そのほうが効率がいいかも知れないし、そういう選択肢もこれからは普通になる時代だと思います。
勝山:実は中嶋さんも学びなおしを考えているんですよね。
中嶋:ひとつの夢でもあるんだけど、海外の大学院に挑戦したいというのがあって、どこかのタイミングで、会社が落ち着いたらやってみたいなというのはあります。
勝山:30代、40代からの大学進学も全然選択肢としてありだと思います。一度就職してから学ぶのも、進学して就職して、また学びなおすこともできるし、人生はどんな選択もできます。
無理せず、飾らず
勝山:質問がどんどん来ています。
質問「社会に出る上で、一番大切にした方がいいものはなんですか」
中嶋さん:できるだけ無理をしない、自分を飾らないというのが、すごく大事だと思っています。
勝山:それはどういう?
中嶋さん:社長なので、毎年、大学生の最終面接をやるのですが、そうすると、面接で自分を偽ったまま合格して、入社してしまう人も出てきます。
面接では「自分の強みはコミュニケーション能力で、自分はめっちゃ明るくて・・・」と言っていたのに、入社後はあまり明るい雰囲気ではないし、ふさぎ込んでしまっていて、人事部が話を改めて聞くと「私、元々明るくないんです」って。
そんな風に自分を着飾って入社しても、あとで辛いだけでしょう。社会に出るには礼儀や作法は必要ですけど、あまり自分を偽ると、絶対に疲れてしまうときが来ると思うので、あまり気負わず、気張らず、というのが一番だと思います。
勝山:そのお話、めちゃくちゃ重要ですね。入社することがゴールになってしまうと、その場しのぎで偽りの自分を伝えてしまいがちで、そのあとでしんどくなってしまう。学生さんだけでなく私たち社会人も、人と関わる上で大切にしないといけないことだと思います。
最後のメッセージ
中嶋さん:最後に、ひとつだけ言いたかったことがあります。それは「自分の可能性は自分で決めてほしい」。
僕は会社が海外進出する時、電設資材の商社で海外進出した企業は前例が無いので、会計士が企画している”海外進出セミナー~進出のサポートします~”なるものにも参加しました。
すると「あなたの業界は絶対に成功しません」と言われる。「海外進出セミナー」なのに、何を言っているんだという話でしょ。
勝山:本当に「何を言っているんだ」ですね。
中嶋さん:僕が思ったのは、「あなたの物差しでは無理なのでしょうけど、僕はそうは思っていないよ」ということで、逆に燃えました。アドバイスとして聞くのはいいけど、自分の可能性をなぜあなたに否定されなくちゃいけないのって。
もちろん海外事業はまだまだこれからですし、無責任なことは言えないですけど、みなさんは若いし可能性は無限だと思うんですよ。だから僕は、自分の可能性を信じて欲しいと思いますね。
勝山:めちゃくちゃいい話ですね。海外進出にそういうストーリーがあったとは。中嶋さん、ありがとうございました。最後に、この時間を終えて、メッセージをいただけたらと思います。
中嶋さん:いや、「自分の可能性は自分で決めてください」ということを一番伝えたかったので、その話はできたのかなと思います。
「ハローライフ」にマッチしているかは分かりませんが、僕の場合は今日お話ししたようなガチガチの状況で、それに沿いながらも自分で選択するところもあって、紆余曲折ありながらなんとかやっています。
今後、もしなにか相談みたいなものがあれば、勝山さんを通してでもいいですし、僕も答えられる範囲で答えたいと思います。
みなさんの人生が豊かになっていくことを願っています。今日はありがとうございました。
一同:ありがとうございました!!
編集後記
今回は中嶋さんのキャリアを中心に、高校生に選択肢の一つとしてお話を届けさせていただきました。
中嶋さんは、大学院進学を考えるくらい学ぶことが好きなんだと編集しながら感じていましたが、ある意味、使命のような形で、今のヤマト電機を引き継ぎ、経営されています。
それでもなお、ハッシャダイソーシャルのような活動を応援してくれていることや、自分自身もこれからの未来にワクワクしながら行動をし続けていることを改めて感じました。
中嶋さんが経営されているヤマト電機さんは、ハッシャダイソーシャルが活動を始めた初期から協賛として、活動を応援していただいています。
その想いも一緒に、これからもわたしたちは若者の「Choose Your Life!」を支えていきます。
引き続き、応援のほどよろしくお願いします!!
高校生の声を抜粋📢
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