vol.2 正直エビス/蛭子能収
先日、蛭子能収の最後の展覧会に行ってきた。
いつからかは正式に覚えていないが、十代後半ぐらいから、私の推しはずっと蛭子さんである。世間では”ギャンブル好き”で、”お葬式で笑ってしまう不謹慎な人”、そんな認識だろうか。
―—確かに、
それも、もちろん蛭子さんの一面であるけれど、それだけじゃないのよ。
会場は、表参道駅から少し歩いた場所にあるギャラリーだった。
地図上ではもうついているはずなのに、一向にたどり着かない。
蛭子Tシャツを着たサイケデリックなサブカル野郎たちも、不安そうな顔でスマホ片手に私の横を横切っていく。建物がお洒落すぎて、”まさかここが蛭子さんの展覧会の会場なわけあるまい”と、脳が自然とシャットアウトしていたせいか、会場周辺を20分ほど彷徨ってしまった。蛭子ファンはお洒落な世界には慣れていないらしい。
元書店員の名誉をかけて断言する。
蛭子さんの作品は、皆が思う5倍は面白い。
思ったことを、こんなにも素直に飾らずにいう人を、私は他に知らない。
思っていても、他人の意見や世間の目が気になって言うのをためらった経験は、誰にだってあるのではないだろうか。
私も、まさにそのうちのひとりで、
自意識が邪魔をして、ついついぼかして話したり、書いたりすることがよくある。そして、話しているうちに、書いてるうちに、「あれ?私が言いたかったのって、これだっけ?」と迷子になっていたりする。
だからこそ、蛭子さんのこの”飾らない言葉”に震える。
だからこそ、蛭子さんのこの”素直さ”に心底憧れる。
蛭子能収、私の永遠の推しメン。
死ぬまで推し続けたいと思う、