君逝きて浮世に花はなかりけり 漱石の俳句です。嫂の登世を悼む句。他に十数句ある。江藤淳によれば、漱石はこの早世した兄の妻を深く愛していた。たしかに、この句からは、そういう情熱が感じられる。他にもう一つ。 朝貌や咲たばかりの命哉 これなんかも、激しい思いが出ている句だと思う。
きのうに続き、ブラームスのピアノ協奏曲第2番を聴いている。セル&クリーブランド管、ゼルキンのピアノによる演奏。ブラームスは恩師シューマンの妻クララを深く愛した。シューマンの死後、ずっと。二人は距離を保ち、結局一線を超えることはなかった…漱石も、登世と一線を超えることはなかった…