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サラハレタココロヲサガシニキマシタと曼殊沙華群るるなかに立ちをり 河野泰子

帰りたいあのすすき原 何枚も何枚も透けた瞼を閉じて    加瀬はる

「鹿の遠音」吹きにし人のみまかりぬ残る一人のいかにかあらむ 田中美智子

てふてふに取りかこまれゐし立葵かたりあひたきあの頃のこと  高田芙美

『渡し船のある街』

6か月前

壁を這うつる草が壁を覆うまで かなしみが笑い話になるまで  加瀬はる

ひとしきり考えているひとりきり会えなくなった人たちのこと のやまきのこ

その中に別の私もいるのだろうミラーが映すもうひとつの空   峯菜実子

すぐそこのあなたはわたしに気がつかず永遠に見守るひとつとこより  薮内栄子

夕闇に君待つ夢の待つほどに色をうしなうしだれ桜よ    のやまきのこ

花蕊をたてて凛々しき仏桑華昼ひそかなる海辺を過ぎつ   田中美智子

シャンソンに「赤い月」とは聞きしかど紫けぶりわたれり今宵   北野ルル

身を寄せて祈っていたい五百年消えることない焰のまえに     永田愛

亡きひととのかたらひ覚めて東雲のうすき明かりに水飲みにゆく 河野泰子

華やかに暮れてゆくのみしろがねの弧の連続が在らうと無からうと 紀野恵

この道ははるかな山に至れども花に埋もるる蝶もあるらむ    高田芙美

Amazonにどこでもドアはもうなくて会いたいひとを待つばかりです 永田愛