人気の記事一覧

泣くたびに美しくなっていく君 いつか海から迎えが来てしまうのか 涙で磨かれてきた身と心は どこまでも淡く透き通っている この世のすべての悲しみを ひとり抱えて消えていくみたいに 毎日頬を濡らしてきたのに 自分のために泣いたことは一度もない 涙姫 彼女が微笑むのは最後の瞬間だけ

『君を待つ』

「神様にとっては僕らの一億年が一日くらいのスケールだからさ、いろいろ悪気があってスルーしたわけじゃないんだよ」

それは地球規模で原子力発電が廃止された翌年――第三次世界大戦勃発後に起きた大きな歴史のうねりと言えよう。 全国的に残存電力が乏しくなってきたことを危惧した第弐東京幕府はその冬、各家庭の暖房器具全てを押収するお触れを出し、速やかに実行に移した。世にいう“こたつ狩り”とはこれである。

水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。

わがままに、優しいふりをして、ほどなく、たそがれる、カタツムリは、君だ。君自身だ。いつだって未練のぶんだけ足跡を湿らせる。尾を引くのは勝手だが…その殻は返せ。家を返せ。頼む。いま、裸足なんだ。冬だし。普通に死ねるし。わりと本気で頼む。後生だから。眠くなってきてるし。頼む。頼む…。

東京のお尻を撫ぜまわす

白くて柔らかくてぷにぷにした君に首輪をつけて、下着になってもらって、四つん這いになってもらって、上目づかいに見つめてもらい、彼女の父親だったものの一部を放り投げて拾ってこさせた。生まれて初めて生理的快感を覚えた。「なんら屈辱ではない」という君の顔を初めて汚したいと思ったその時に。

仕事に集中すればするほど思考の削りカスのようなものが脳裡を横切る。それは例えば弾丸が銃砲身の中を突き進む際、バレル内に刻まれた螺旋状の浅い溝――いわゆるライフリングによって「回転」を与えられるようなものだ。この溝の具合によって弾丸の「転度」が決まり、横切る思考世界の偏りも変わる。