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『君を待つ』
「待つ」という行為にのめりこんでいる。
いや、狂っていると言ってもいい。
いつか君がにっこり微笑んでくれるんじゃないか。
いつか君が優しい口をきいてくれるんじゃないか。
いつか君がそっと手を握り返してくれるんじゃないか。
いいや、いっそ、接吻で
私の唇に自分の唇を重ね合わせて
しっとり湿らせてくれるんじゃないか……
そうして――
「待つ」
「待ち続ける」
「永遠に」
ああ……なんて甘美で狂おしい響きだろう。
けして起こり得ないとわかっていながらも
飽くことなく「待つ!」
「待ち焦がれる!」
きっとこれが――これこそが
本当の“愛”というものなのかもしれない。
いいやきっとそうに違いない!
私はそれが二度と起こらないことを知っている。
にもかかわらず、こうして待っている。
それもけして「苦」ではない。
「苦」どころか、起こり得ない奇跡を延々と妄想し、
待って待って待ちわびて、絶えず歓喜に打ち震えているのだ。
――君を手にかけたあの日から。
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