【劇評361】玉三郎の富姫を復活させた團子の純粋さ。『天守物語』をふたたび観る喜び。
鏡花の世界
絢爛たる詞章で、真実の愛を語る。
泉鏡花の『天守物語』は、玉三郎が重ねて上演してきた新作歌舞伎である。上演年表を見ると、私は、平成六年二月、銀座セゾン劇場の公演から観ている。
宍戸開の図書之助、宮沢りえの亀姫、樹木希林の舌長姫、南美江の薄、島田正吾の桃六という配役だから、歌舞伎公演ではない。『天守物語』は、長くレーゼドラマとされ、鏡花の生前は上演されなかったくらいだから、この芝居を新たな革に包むには、相応の腕達者を集めた配役が求められたのだとわかる。
玉三郎の『天守物語』は、図書之助の歴史でもある。
新之助時代の團十郎から、海老蔵が相手役として長く続いた。したがって、歌舞伎座の演目として上演してからは、玉三郎の富姫、現・團十郎の図書之助の顔合わせが続いた。今回、團子を起用するにあたっては、玉三郎が『ヤマトタケル』の好演を観ての抜擢と筋書にある。その期待に応えるべく團子は、この役を懸命に演じてあたりをとった。
團子の立ち位置
年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。