「廓の掟に縛られながらも、懸命に生きていく薄幸な女をいつかは演じてみたいと思っていました」菊之助の『籠釣瓶花街酔醒』。初演当時のインタビューを再録します。
五代目菊之助は、2012年の12月、新橋演舞場で『籠釣瓶花街酔醒』の八ッ橋を初役で演じている。八ッ橋をひと目見たとたんに魅入られる自動左衛門は、父菊五郎だった。
この初演のときに、菊之助を私がインタビューしたメモが見つかったので、ここに再録しておきます。
○今回、籠釣瓶花街酔醒の八ッ橋役を勤めることになった経緯を教えて下さい。
10月の名古屋御園座で『伊勢音頭恋寝刃』のお紺を初役で勤めさせていただきました。12月の『籠釣瓶花街酔醒』の八ッ橋は、歌舞伎の縁切り物のなかでも、お紺と並ぶ大きな役です。
廓の掟に縛られながらも、懸命に生きていく薄幸な女をいつかは演じてみたいと思っていました。
前々から、父菊五郎に、家の芸ではないけれども、女形を勉強していく上で、挑戦しがいのある役柄だと思うので、いつかは演じてみたいと話しておりましたが、ようやく実現することが出来ました。
父菊五郎は、1972年の10月、四代目菊之助時代に、国立劇場で、先代の中村勘三郎のおじさんの次郎左衛門の相手役を勤めさせていただいていますが、そのことが頭にありました。
83年の御園座では菊五郎になっていますが、もう一度演じています。
また82年には、歌右衛門のおじさんの八ッ橋、勘三郎のおじさんの次郎左衛門に、間夫の栄之丞を勤めたこともあります。
年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。