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天才と名人 中村勘三郎と坂東三津五郎

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今もあふれる悲しみ。『天才と名人 中村勘三郎と坂東三津五郎』(文春新書)を書くことになったのも、私にとっては宿命だったような気がしています。いつまでも忘れられず、記憶のなかで生き…
ふたりの天才と名人のことが今でも、こころから離れません。『天才と名人 中村勘三郎と坂東三津五郎』(…
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記事一覧

【劇評346】勘九郎の『髪結新三』。果敢な挑戦。

型の美しさより、人間の業と考えれば、勘九郎初役の『髪結新三』が、がぜん意味を持ってくる。…

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長谷部浩
1か月前
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ひとかどの役者と、なりおおせるために かつての納涼歌舞伎を振り返る。その3 『野…

 平成十一年に、惜しまれつつ九代目三津五郎が死去した。翌々年の一月には、八十助は十代目を…

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長谷部浩
1か月前
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ひとかどの役者と、なりおおせるために かつての納涼歌舞伎を振り返る。その2 円朝…

 勘三郎と三津五郎が注ぎ込んだ熱は、一年では終わらなかった。  年を追うごとに、納涼歌舞…

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長谷部浩
1か月前
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ひとかどの役者と、なりおおせるために かつての納涼歌舞伎を振り返る。その1 勘三…

 かつて、十代目坂東三津五郎と定期的に会う機会があった。単行本の取材のためである。  話…

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長谷部浩
1か月前
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【追悼】近くて遠い人。写真家、篠山紀信の想い出。

 神出鬼没の人だった。  篠山紀信と会った場所を思い出せばきりがない。青山のスタジオはも…

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長谷部浩
8か月前
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鶴松がお光を勤める『野崎村』。勘三郎の思い出。

 猿若祭二月大歌舞伎。もう十三回忌となるのか。墓参りは欠かさないようにしているが、今も、…

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長谷部浩
10か月前
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【追悼】無類の役者、四代目左團次のユーモアについて。

 代表作ではなく、口上から追悼を書き始めることをお許しいただきたい。  襲名や追善の口上で、左團次さんが参加されると聞くやいなや、いったいどんな暴露話やブラックジョークの矢が放たれるか、楽しみでならなかった。  なかでも、抱腹絶倒というよりは、一瞬凍るような気にさせるのが、左團次さんの真骨頂だった。八十助さんが十代目三津五郎襲名の席、私が聞いたのは、「金も女もわしゃいらぬ。せめても少し背がほしい」であった。  三津五郎さんは、背が低かったけれども、『勧進帳』の弁慶にも定評

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京都の花街、愛したり、食べたり、裏切ったり。

 京都の花街のシステムには、人を惹きつけてやまない深さがある。  是枝裕和総監督の『舞妓…

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長谷部浩
1年前
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【劇評288】彌十郎が、故・勘三郎を彷彿とさせた。『人間万事金世中』。

 強欲な家族に徹している。  新春の歌舞伎座第二部『人間万事金世中』(今井豊茂演出)は、…

長谷部浩
1年前
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【劇評287】目に焼き付けておきたい玉三郎の揚巻。

 師走の襲名披露は、一年の締めくくり。しかも夜の部は、配役を一新した『助六由縁江戸桜』が…

長谷部浩
1年前
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【劇評286】觀玄改め、八代目新之助の『毛抜』は、荒事の本質に届いていた。

 堀越勸玄は、ひとかどの役者へと進み始めた。  十二月の歌舞伎座は、八代目市川新之助襲名…

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長谷部浩
1年前
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ニュヨークスケッチ2 ザ・ドラマ・ブックショップのトートバッグに出会う。

 なにしろ二一年振りのNYだから、かつて訪ねた場所が懐かしい。  メトロポリタン歌劇場の向…

長谷部浩
2年前
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【劇評258】右近、巳之助の『弁天娘女男白浪』は、歌舞伎の未来を予告する。

 歌舞伎座で『京鹿子娘道成寺』を踊るのは、女方舞踊の頂点に立つひとりと認められるに等しい…

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長谷部浩
2年前
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【劇評255】幸四郎、右近の愛情深き『荒川の佐吉』

四月大歌舞伎、第二部は新作歌舞伎とめずらしい舞踊の狂言立てとなった。  真山青果が大の苦手な私にとって、唯一、愛着が持てるのが『荒川の佐吉』である。  この戯曲は、「運命は自らの手で切り開く」といったメッセージ性ばかりが立ってはいない。  偶然から共に暮らすことになった男ふたりと幼子の愛情の深さが描かれている。血が繋がっているから家族なのではない。ともに、いたわり合う心があってこそ、家族なのだと語りかけてくる。  今回は、幸四郎の佐吉、尾上右近の辰五郎の組み合わせである

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