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【劇評349】観客の心を熱くする歌舞伎役者。尾上右近の「研の會」の達成
歌舞伎を観て、心を熱くした
自主公演も第八回を数える。尾上右近による『研の會』は、大阪、東京と二都市でそれぞれ二日、昼夜四公演だから、熱烈に支持する贔屓が、右近を後押ししているとわかる。その期待にきっちりと応えていくだけの技倆と熱意が備わっている。
出にたちこめる過去
まずは、『摂州合邦辻』。右近によって、人間の業をめぐる芝居だとよくわかる。花道の出から、堂々たるものだが、夜の道をひとりあるく玉手御前に、これまでの来し方を探っている趣がある。
あでやかな片袖は、高安の家の後添いに迎えられた華やかな日々から、なぜ今に至ったのか、自らを深く探っている様子である。物狂いは、右近の玉手に取り憑いているかのようで、そのときどき衝動に突き動かされる人間のありようをよく写していた。
猿弥の合邦の叱責をものともせず、菊三呂のおとくに諭されながらも「尼になることはいやでござんす」ときっぱり言うとき、自らの意志を貫こうとする強さを打ち出す。
一方、俊徳丸がいるのではと、暖簾の奥や上手屋台を探る件りへ、艶めかしく、艶やかな玉手が素晴らしく、この暗い庵室に、情念の灯りが点ったかのようだった。
年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。