【劇評234】巳之助代役の『加賀見山再岩藤』。上上吉の出来映え。
代役は、役者が大きくなるための好機である。
猿之助の休演を受けて、巳之助が八月花形歌舞伎第一部で、芯となる役を勤めた。
『加賀見山再岩藤』では、鳥井又助に配役されていたが、この役は鷹之資に渡した。巳之助は、多賀大領、御台梅の方、奴伊達平、望月弾正、安田隼人、岩藤の霊の六役を早替りで演じ分けた。
早替りであり、しかも、今回は上演時間を二時間以内に収めての「岩藤怪異編」である。すべての役が書き込まれているわけではないので、出の一瞬に勝負が決まる。また、弾正と岩藤の霊は、重い役なので、貫目が必要である。こうした点を含めて、巳之助は、代役を見事に勤めた。
日頃の修練の賜物である。
はじめから見ていく。
年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。