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野田秀樹の宇宙

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現代演劇を代表する劇作家・演出家・俳優の野田秀樹についての劇評、エッセイをまとめました。 近年の野田の仕事が見渡せるマガジンです。長谷部は、二十代から野田の仕事を見守っています。…
このマガジンは、近年の野田秀樹の仕事を振り返るだけではなく、現在の動きもフォローアップしていきます…
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記事一覧

池谷のぶえ藝の冴え

 特異であることが、すなわち自然であること。  あるいは、どこにもいずはずもない人間が、…

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長谷部浩
2か月前
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野田秀樹は、なぜ唐松富太郎を花火職人としたのか。

  俳優と役柄  やくざと兵隊 日本人の男優は、やくざと兵隊を演じさせるとうまい。そんな…

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長谷部浩
2か月前
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舞台で主演する資質とはなにか。

男優の資質  野田秀樹作・演出の『正三角関係』で、松本潤は、堂々たる厚みで舞台を支配し…

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長谷部浩
2か月前
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夏の仕事

  慶應義塾大学では、永井荷風や久保田万太郎らが健筆をふるった「三田文學」を刊行していま…

長谷部浩
3か月前
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【劇評345】法廷劇に巻き起こる風。野田秀樹作・演出『正三角関係』。

 『正三角関係』には、何が賭け金となっているのだろう。 ずいぶん以前、夢の遊眠社解散のと…

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長谷部浩
4か月前
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【劇評家の仕事1】 野田秀樹の『正三角関係』を観る前に、『カラマーゾフの兄弟』を…

 劇場に行く前に、戯曲を読むかどうか。  これはなかなかむずかしい選択です。  もっとも…

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長谷部浩
5か月前
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来週の月曜日、野田秀樹について、まとまった講義をします。

 月曜日の講義のために、この数週間、準備を進めてきました。原稿はようやく昨日、ほぼ完成し、今は、Keynoteを使ってプレゼン書類に取り組んでいます。  以前、ウィーン大学で講義したときは、十分な余裕があったのですが、今回は、時間に余裕がないので、映像を埋めこむのはあきらめて、写真とテキストだけのシンプルな書類にしました。  講義のテーマは、『野田秀樹にみる言語と身体』です。  『野田秀樹と蜷川幸雄』にしようかとか、迷うところはあったのですが、結局、長年、その舞台を見続けてい

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【追悼】近くて遠い人。写真家、篠山紀信の想い出。

 神出鬼没の人だった。  篠山紀信と会った場所を思い出せばきりがない。青山のスタジオはも…

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長谷部浩
10か月前
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【劇評306】野田秀樹渾身の問題作。『兎、波を走る』は、私たちを挑発する。十枚。

   ドキュメンタリー演劇ではない。プロパガンダ演劇でももちろんない。  けれども、モデル…

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長谷部浩
1年前
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『新潮』の戯曲、『文學界』の劇評、7月7日、七夕ですので、あわせてお読みいただけ…

 雑誌『新潮』に野田秀樹さんの戯曲、『兎、波を走る』が掲載され、今日、七夕の日に、書店に…

長谷部浩
1年前
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松たか子の才能と、忘れられぬ思い出。『兎、波を走る』を見て。

 朗読劇ではなく、モノローグの名手として、松たか子は長く記憶されるだろうと思う。  その…

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長谷部浩
1年前
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なかなか読み解けぬ『兎、波を走る』を二度観て。

 気の張る劇評を書き終えて、再校を読んでいます。  急に昨夜、細部で確認できていない部分…

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長谷部浩
1年前
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AIが、野田秀樹作らしき戯曲を書き上げるのは、何年後なのか?

 NODAMAPが公演ごとに発行しているパンフレットは、中身がぎっしり詰まっていて読み応えがあ…

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長谷部浩
1年前
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高橋一生、その光と影

 現在、東京芸術劇場で上演されている『兎、波を走る』(野田秀樹作・演出)で、高橋一生は、脱兎の役を演じている。『フェイクスピア』以来、二度目の野田作品での主役。髙橋は妄想の闇のなかで、孤独に生きる人間を見事に演じていた。  高橋一生は、まぎれもなく二枚目だけれども、明るいだけの好青年ではない。そこには、陰翳を礼賛する精神がある。蛍光灯の明かりではなく、行燈の灯りに揺れる人影の美しさ。その傾きを大切に生きる日本的な美意識をからだにまとっているのだった。  舞台俳優の幸福は、

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