【劇評195】勘九郎、猿之助、観客の胸をうつ。又平とおとくの物語が、成熟した舞台として帰ってきた。
歌舞伎座は、第三部、第四部と近松門左衛門の作品が続く。第三部は、奇瑞と名跡をめぐる物語。『傾城反魂香』から勘九郎、猿之助の「土佐将監閑居の場」が出た。
勘九郎の又平に猿之助のおとく。いかにもこの辛酸をなめてきた夫婦にふさわしい配役で、芝居を堪能した。
鶴松の修理之助が、竹薮に現れた虎を消す功績により、土佐の名と印可の筆を受ける件り。市蔵の土佐将監がいかにも癖のある男に作っている。帝の勘気をこうむり、山科に隠遁している体である。
鶴松はひたすら爽やかだが、名筆の絵