【劇評224】勘九郎、七之助、松也が作りだすドラマの余情。串田和美演出の『夏祭浪花鑑』。
活き活きと呼吸する人間として、ひとつひとつの役を見直していく。
串田和美演出・美術の『夏祭浪花鑑』は、芝居には完成形などはなく、常に先を追い求めていく精神に貫かれていた。
夏の入道雲が、空を覆っている。
上手には明るい日差しを浴びて鳥居が見える。よしず張りで囲われた辻に、遠くから祭り囃子が聞こえる。蝉時雨が降り注いでいる。
往来する人々がいる。材木を持った男は、運び損なって、地面に落としてしまう。三味線を持った男が通りすぎていく。
神主が現れると、人々は辻に立