【劇評169】
猿之助、七之助の万事派手な「吉野山」。藝と笑いの「源氏店」は、幸四郎の戦略に貫かれていた。
社交の場でもなければ、消閑の場でもない。舞台と観客席が、真摯に向かい合う歌舞伎座となった。
唄も三味線も鳴り物も黒いマスクを付けている。まるでアラビアンナイトの盗賊團といったら叱られるだろうか。
このマスクが来月も続くようであれば、立唄や立三味線は、さりげなく家の紋が入った特製をぜひ付けていただきたい。遊び心があれば、舞台はいよいよ楽しくなる。
第三部は、『義経千本桜』の「吉野山」。清元の地。猿之助の源九郎狐に七之助の静御前。猿弥の逸見藤太という充実の配役で、お