庭には二羽
版画にせよ、てぬぐいにせよ、ちょいとシャレの効いた絵柄が持ち味の晴三ですが、今回はそんなわたくしの天敵の話から始まります。
天敵あらわる
あれは紅葉で有名な某観光地で出店していた時のこと。アベックとおぼしき若い男女がわたくしのてぬぐいを見てくれています。
さてさて、まずはウチの切り込み隊長「めじろおし」でご挨拶いたしましょうかね…
「めじろが満員電車でめじろ押しになってるんですよ」
そうお声掛けしたらば、女性の方は「おもしろーい」と笑って下さいました。ところがどっこい、男性の方は悪びれることもなくニコニコしながらこう言い放ったのです。
「へぇ、めじろって鳥がいるんですね」と。
え…ボケなの?ツッコんだ方がいいの?と思いましたが、どうやらマジなご様子。そうね、たまたま今まで「めじろ」を見た事が無く、たまたま今まで「めじろ押し」という言葉を耳にした事がなかった…
そういう人生も、あるよね。
遠い目をしながら若いアベックを見送った晴三でした。
まあこれは可愛い例でして。
「ちょっと意味が分からない」「これはなにが面白いの?」などと問われて、ご説明したあげく「ふーん」という反応をいただいた時、つい「天敵あらわる…!」のひと言が頭をよぎってしまいます。
今回ご紹介するのは、その「ふーん」度数がちょいと高めだった版画です。
確かに、なじみ深い“庭”ではなかったかもしれない
「庭には二羽」
このタイトルとこの絵柄で、もはや説明要らず!と思ったのは完全にわたくしの驕りでした。ここで庭と言っているのは、水を使わずに石や砂でつくられた庭…そう「枯山水」なのです。説明するまでほとんど分かっていただけませんでした。表現力の至らなさよ。
そうはいっても「枯山水なんですよ」のひと言でご理解いただけると思えばさにあらず。枯山水って何ですか?と問われ、枯山水ってほらアレですよ!京都の!お寺の!りょ、龍安寺とかの!という残念な説明をする始末。
シンプルな構図でジワジワと笑える最高にクールな作品が出来たぜ。と悦に入っていたのですが、あまりの伝わらなさにお祭の翌日のわたあめみたいになってしまいました。しおしお…
とまあ、これは最初に展示した時のお話。その後いろいろな所でご覧いただいて、ごく一部の方に楽しんでいただけましたので、ちょっとだけ生地を混ぜ過ぎちゃったシフォンケーキくらいまでには気持ちも膨らみました。
一昨年の展示会で初めてお買い上げいただいた時には、心の中の大輪のバラ(エア花束)とともに作品をお渡ししたものです。
あんまり人気はないけれど、とても気に入っている作品なので、つい力が入って鬱陶しい文章になってしまいました。今回ご紹介するのはこの1枚だけですのでご容赦下さい。
次回はサラッと汗拭きシートのような爽やかさでお送りします。
【期間限定(7/10~7/16)】今回紹介した木版画を販売します。