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凛として、ジャケット。


もう、夜までも春の匂いがする。
風たちも、春風を吹かす練習をしている。

春が似合う服は、ジャケット。
それは、わたし達の
やわらかな覚悟に似合う服だから。

晴海 たお


自分のなかで、
なにか、やわらかな覚悟のようなものが芽生えることはないだろうか?
それは、ときに、春の力を借りて起きる。
胸のあたりで、もぞもぞする感覚。
冬眠から目を覚ました動物たちと同じように
自分も目を覚まして、新しい服に身を包んで、気持ちを切り替えたい。
なんなら、何か新しいことを始めてみたかったり、
イメージチェンジをして、今までとは違う、新たな自分の一面を楽しみたい、
とか。


そんな春先から、春にかけてお勧めしたい服が、ジャケットだ。

まだ寒いこの時期は、しっかりめのカーディガンが代わりとして、
もう少し暖かくなったら、アウター代わりの羽織として活躍する。

ニットのカーディガンの方が、
身体に優しくフィットして着心地もいいかもしれない。
スプリングコートの方が、春に吹く風から守ってくれるかもしれない。
でも、そこを敢えてジャケットをお勧めしたい。


身体を鍛えて体幹がしっかりした男性のスーツ姿が素敵なように、
女性にも、ジャケットを美しく着るコツがあると思うのだ。

それは、男性とは視点が違う。
目に見えない部分に着こなしのコツがある。

それは、意思や覚悟を持って着ることだ。

わたしが、
ああ、この人はジャケットが似合うな、と感じる人からは
その人の内側から滲みでる意志のようなものを感じる。
まさに、凛とした空気感。
そして、それは、張り詰めてはいない。
どこか、やわらかさ、しなやかさも混ざっているのだ。

だからなのか、わたしはずっとジャケットが苦手で
なんだか自分にはしっくりこなかった。
それは、いつもどこか
自分の本当の望みがわからなくて、
『自分不在』、みたいな感じだったから。


長年服の世界で生きてきて思うのは、
魅力的な服の着こなしは、単にコーディネートだけではないということ。

その服を着て、どんな自分を魅せたいか、
その服を着て、どんな気分でいたいか、
そして、どんな気分だからその服が着たいのか。


最近、わたしにも、少し、
ジャケットが似合うようになってきたな、とふと思った。
それは、牛歩の歩みでも、自分の望みに気がついて
ささやかな覚悟を決めたからかもしれない。


さあ、
凛として、ジャケットを。



晴海 たお



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