『バンオウ-盤王-』第43話「解放」感想 月山元復活!完全体元四郎誕生!!人間どもを滅ぼせる日は近い!将棋で
◆最後の対局
11月10日(金)に『バンオウ-盤王-』の最新第43話が配信された。
無事、会場へやってきた月山さん。
しかし先週で大分気落ちした様子は変わらず。寧ろ今回やってきた理由がこの対局を終わらせることだけとのこと。つまるところ、これがプロ戦に挑むのが最後なのだろう。
月山さんの判断はなにも間違ってはいない。
これまで自分の身を削りながら戦ってきたのだから、ようやく訪れた解放の時でもある。且つ、せめて最後は自分の好きなように打たせてあげてもいいと、彼を尊重してやりたくなる。勝敗は二の次として。勿論ぼくとしてはできるところまで戦い続けてほしいのが本音だし、そんな約束された結末を期待せずにはいられないのだが。
万一勝利後は棄権…してしまうのだろうか。
それは彼の奮闘を楽しんで刮目する将棋教室のみなさんやこれまでのライバルへの裏切り・失望となりかねない気がするのだが…ただ月山さん本人は今はそこまで視野に入れていないかもしれない。成ってしまったらその時に深く考える、そんな主義。
でもこの漫画ならその辺上手くフォローしてくれそうなんだよな。
なんなら月山さんは「俺はこの対局で終わりにするつもりだった」と本音をぶちまけられるようになったら、将棋教室のみなさんが「何言ってんだ月山さん!!」と明るくギャグ調にビシバシド正論をツッコみつつ月山さんに熱を入れてくれる陽の展開になってくれそうな気がする。
これは単にぼくが盛り下がってしまう展開を望んでいないのもある。だってあの将棋教室のみなさんが月山さんに失望するとか、そういうの解釈違いだもん。綿引先生もそこを理解してくれそうだな、我ながら勝手ではあるが強い信頼があるのだ。
それはそうとアンナさんかわいい。
「おー月山勝ってますか?」と、「おー」って軽く伸ばしているのがなんかかわいい。この人も月山さんの対局を楽しく観戦しているだけに、下手なところで打ち切って失望させたくない。
◆山岸九段
数十年トップの座を譲らない山岸九段。
オーラだけでなくヴィジュアルから相当の兵なのがひと目でよく分かる強キャラだ。流石の月山さんでも勝てるかどうか半信半疑だったのだろうか。ただ、将棋ジャンキーな月山さんはこの人のことも調べつくし、またもや見たことのない景色に興奮する予感しかないのだが…
予感は的中、顔色を変えさせた。
僅か数ページ後だし、こうなる結果自体は想定通りだった。あんなにダウナー気味だった月山さんがやる気スイッチ入ったようにガチになるのも極めて解釈通りである。それでも緩急の生み出し方が上手いのだろうか、山岸九段の顔色が変わっているだけでも「オッ」と見入ってくる。
正直な話、山岸九段は月山さん復活展開の当て馬になりそうな予感は前回からしていた。今のところ、強キャラなのは見るからに期待できるのだが、そこまで大物感はない。下手にかませで終わらせるのは微妙な後味が残ってしまう。大抵そういうのはあからさまな小物をかませにさせるケースが多いのだが、作品全体の質を下げかねない悪手だ。
ただやはり、例によって綿引先生へ強い信頼を寄せております案件になってしまうのだが、山岸九段にも熱を入れてくれるWin-Winの関係になることを信じたい。
実際今週はガッツリ月山さん復活展開に全振りしているのは正しい判断だし、次回で山岸九段の掘り下げが来る構成になればこちらとしても気持ちの整理がしやすい。作り手への信頼とは個人的な問題なのだが、やっぱり安心して読めるのはデカいんだよな。約束されたポジ展開は予想通りとも言えるが、ここぞというタイミングで来るなら寧ろ大歓迎なのだ。
◆無自覚
月山さん本人すらも想定外だった事態。
いやこちらからすれば「やっぱり月山さんはそうならなくては!」と期待通り・解釈通りなのは勿論である。だが今回注目してほしいのは、
月山さん自身が何故こうなったのかのマジ感溢れる葛藤。
今週はここが読み応えがあった。頭ん中将棋のことでいっぱいなのは「やっぱ好きなんすねえ」と安心感があったし、いつものことじゃないかとツッコまざるを得ないのだが、自分でもびっくりするほどに予想以上に将棋が好きすぎるというはじめての自覚だったのかもしれない。
なにせあんなに「この対局で最後にしよう」と決意していたのに、そんな負の感情を悉く塗りつぶすように将棋のことばかり考えちゃうとか、そんな自己矛盾めいた現象は心底びっくりしていいだろうと。こうなるマジ感の説得力がすごいんだよな。全然なあなあでふわふわじゃない。これは月山さんの立場になって再読すると肌で感じ取りやすい。
将棋中毒者!知ってた!!
そうだと分かりきっていながらも、月山さんのマジの復活なのをじわじわと示唆しつつ、この約束された展開を盛り上げていくのが本当に上手い。「月山さんが帰ってきた!!」という興奮をとても隠せずにはいられない!
それにしても今週はめちゃくちゃページが多くあるように感じられたなあ。実質今回21ページという微増だったのだが、30ページのボリュームがあった気がした。「えっまだ続くんだ!?」とびっくりした。いや今週に限らない現象なんですけどね。
◆完全体元四郎
良い感じに盛り上がったところでお兄ちゃんがまたしてもやりやがった!!
…まあ、ぼく以上に盛り上がっているのは間違いないんだよな。メッチャウキウキしているのも解釈通りなんだよな。先週あんなにかっこよく月山さんに熱を入れてくれた人だもん。それがちゃんと今週実になれば嬉しくなるしかないだろと。
でもリアクションが期待通り面白すぎて突然別次元に投げつけられた気分になっていた。
ラストのこの流れすげえな。
ここだけ見ると主人公覚醒に高揚しまくっている悪の組織の領主にしか見えないんだもん。なんなんだよ「完全体元四郎」って!カーズ様かよ!将棋漫画らしからぬフレーズやめろ!
でもマジで将棋で人間どもを滅ぼせるかもしれないと思ってしまった。こわい。
最後めちゃくちゃ笑ったけど、これはこれで更なる盛り上がりを提供してくれたので文句なし!ふざけたギャグオチではあるのだが、お兄ちゃんと一緒にハイテンションで月山さん復活を盛り上がれるのはデカい。
月山さん復活展開だけでも十分アツかったが、お兄ちゃんが過激的な面白さのスパイスになってしまった。お兄ちゃんで面白おかしくいじる展開はもう大分擦っているなあと感じられてきたが、クドさも飽きもない。つーかハイテンションしていないと寧ろお兄ちゃんのことを心配になるレベル。