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『バンオウ-盤王-』第42話「戦う理由」感想 正真正銘の神回!!!!お兄ちゃんかっこよすぎ!!!!


◆将棋教室存続

11月3日(金)に『バンオウ-盤王-』の最新第42話が配信された。最新刊4巻は先日発売された。

衝撃のラストを迎えた前回。
将棋教室の改装工事費の資金についての詳しいいきさつが描かれた。和島さんひとりで銀行からお金を借りたり市から補助金の申請をしたことでなんとかお金が集まったそうだ。常連さんがクラウドファンディング等を検討して協力しようとしていたそうだが、あまり迷惑をかけたくない故に断られたのだろう。和島さんは第2話で月山さんの提案を一度断っていたからな。

それでも、月山さんのこれまでの行動がすべてだった。
月山さんのおかげで将棋教室が以前より盛り上がり、常連さんも増えてきたのはもちろんだが、月山さんが行動しなかったら教室を占めるつもりだったほどに、和島さんの命運を変えてしまった。自分の為に将棋で救うなら、尚更占めるわけにはいかなかったのだろう。

今週良かったところ。
月山さんは将棋教室を救うために竜王戦に挑んでいたわけだが、目標達成すればもうそこで終わりではなく、「竜王戦を戦ってくれ」と気遣ってくれたのが大人の対応として良かった。和島さんならこれくらい言ってくれて当然な気持ちはあるが、元より本作への強い信頼があってこその期待通りの言葉選びである。月山さんの気を損なわせない、気配り上手だ。

だが、月山さんにとってはやはり複雑な想いは拭え切れない。
将棋教室存続自体は良かったとほっとしているが、やはり当初の動機がこうもあっさり失われてしまうとこうなってもいいよなあと。それは先週ラストでも、月山さんの表情から察せられていたのだが。

◆綺麗なお兄ちゃん

月山さんが完全燃焼になっている最中、たまたまおうちにやってきたお兄ちゃんが差し入れの血を片手に持ってやってきた。教室存続は良かったじゃないかと喜んでいるし、お兄ちゃんが月山さんにとって大切な憩いの場であることを尊重してくれた。お兄ちゃんってたまに綺麗なお兄ちゃんになることがあるよな。そこが好きなんだよな。
「大切な大切な憩いの場」と、「大切な」を二度も繰り返しているのが思いやりが伝わってきてすごく好き。

…まあ直後に将棋で人間どもを滅ぼす云々と勝手な押し付け発言が出てしまったので、いつも通りであるが…

いつもは月山さんがコント風味にツッコむのがおやくそくだが、相当重症までにそんな気になっていない。そりゃあ空気を読むべきだろうと。だが、これはこれでかえってお兄ちゃんが月山さんの理解者であることを示してくれている。
…逆に言えば、月山さんがツッコむ度に「ハッハッハ!!そういうツッコミだぞ元四郎!!」とニヤニヤしていたんだろうな。

◆戦う理由

前回時点で「お兄ちゃんやアンナさんが月山さんをどうとか説得してくれるのでは?」と予想できたのだが、期待通りお兄ちゃんの説得フェイズに移ることとなった。

だが、それが期待以上にアツく、今週が神回たることを主張してくれるお兄ちゃん株爆上げ回だった。お兄ちゃんがかっこよさすぎる。

お兄ちゃんはアホではあるが、これまで兄同然に月山さんの戦いを見届けてくれたのだからこそ、月山さんが将棋好き故に自ら人間たちと望んで戦ってきた確固たる事実をつきつけてくれた。これは同じ吸血鬼という立場であり、こうして戦う理由を明かせられる相手がお兄ちゃんだからこそ、言ってくれるしか他ならないのだろう。
「将棋で人間どもを滅ぼす」というのは実にアホである。だが、人間たちと戦うことそのものはお兄ちゃんを焚きつけたのは間違いないはずだ。和島さんが月山さんの行動を見て教室存続を決意したように、お兄ちゃんも(将棋のルールは理解していないけど)自分の野望を果たしてくれる弟として、対局中はさぞ興奮していたのかもしれない。
勿論お兄ちゃんの思惑はすべて分かり切ったことではないので、これは単なるぼくの想像に過ぎないのだが。

第34話より

かつて天草先生との戦いを見届けていたときも、本当の兄のようにこうして見届けていたのだから、あながちそれは絶対間違いとは言い切れないのだとぼくは主張したい。

「竜王戦はお前の戦いだ」
今週ジワジワお兄ちゃんカッコイイーッとテンションアゲアゲドンドンしていたラストでこれですよ!もうなんなんですかこの綺麗なイケメンお兄ちゃん!!これまでのギャグムーヴをチャラにしたくなるくらい、アツすぎる激励ですよ!!

お兄ちゃんが差し入れの血を「ま、これは置いてくよ」と一言入れてくれたのも好きです。絶対月山さんが復活時に一本飲み干すために使うヤツじゃん!!今回ばかりは変なクスリは流石に入れてないと思いたい。

◆ヒーローは遅れてやってくる

ラストも最高だった。
今週時点ではまだ月山さんが完全復活には至っていない。寧ろ今週1話でコロっとそうなるのも拍子抜け極まりないし、暫し考えさせる時間を与えてもいいんじゃないかと甘えてやりたくなるのだ。ただでさえぼくがこの漫画に激甘なのもあるのだが。

何が最高かというと、月山さんの登場を待ち続ける皆さんが読者のぼくたちと見事にシンクロしているってことだ。今週ラストはまさしく「ヒーローは遅れてやってくる」のシチュエーションになっている。月山さんはここで立ち直るしかないだろうと期待度MAXなのだが、作中のみなさんもこうなのがますますテンションさせられてすげえ嬉しかった。みんな月山さんのことが大好きなんだなあって。
「山岸先生を待たせるとは月山さんもエラくなったな」と軽口を叩いていたのも気味が良い。案外月山さんはそうなってもいいよなと微笑ましくなれるのだ。

この漫画はただでさえスピーディーな展開が魅力のひとつだが、今週は見事にそれを活かし切った神回だった。
みんなが月山さんに期待してくれる=月山さんをウジウジさせない、これが成立していると言ってもいいだろう。このおかげで次回までの停滞感を感じさせないのもポイント高い。こんなにも月山さんという主人公の復活が待ち遠しく、アツく全裸待機できる漫画も珍しい。本当に良い漫画ですよ。マジのガチで。

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