「200字の書評」(348) 2023.8.10
こんにちは。
朝から晩まで、まるでサウナに入っているかのような暑さです。体温よりも気温が高いとは、どうも尋常とは思えません。このような地球を作り出したのは人間自身の行いそのもの反映であろうか。因果応報と思うと、冷汗三斗です。欲望の資本主義の結果かもしれません。子孫にこの地球を渡すわけにはいきません。枯れ木も山の賑わい程度ながら、何とか世直しをと思う今日この頃です。
さて、今回の書評はアメリカと映画の話です。
丸山俊一+NHK「世界サブカルチャー史」製作班「アメリカ流転の1950-2010S」祥伝社 2023年
先住民を駆逐して建国し、覇権国として君臨する(やや陰りは見える)アメリカを、映画は反映している。戦後アメリカ映画とテレビ番組が主流となり、家庭での大型冷蔵庫の豊富な食料に驚き、西部劇では勇敢なヒーローが華麗な拳銃さばきを見せ、ラブコメディーの軽妙さに私達は魅了された。冷戦期には核への脅威が、衰退期には政治的メッセージが込められている。映画と実体が相互作用しつつ、時代と社会の鏡になっている。
【葉月雑感】
▼ 夜から朝にかけても気温が下がりません。早朝の散歩でも、汗だくになってしまいます。いつもの散歩道、暑さのあまり一日二日サボってから歩いてみると、田んぼの稲の伸びを感じられます。異常な高温でも着実に育つ植物に感動を覚える朝の散歩です。堤防のススキが背丈を超すのは間近のようです。自宅では一日中エアコンが稼働し、団扇も大活躍です。団扇は竹製を愛好しています。使い勝手といい、風の柔らかさといい馴染みます。プラスチック製は重いうえに風情がありません。
▼ 数人のツイッターを覗いています。数日前になんか変な感じを受けました。アイコンが変です。青い鳥が黒いXになっています。愛らしさが怪しさになってしまいました。買収したイーロン・マスクの決めたことでしょう。IT業界の一角で名と財を成した金満オーナーの振る舞いは、成熟した社会的な知性には無縁のように見えます。これに限らず振舞い方は金の力により、すべて自分の思いのままなのでしょうか。
▼ 国会議員(自民党女性局)のパリ漫遊が話題になっています。自己負担は少々あるとはいえ、党からの資金は税金が原資です。海外研修一般を否定しません。でも、多数の国会議員が入れ代わり立ち代わりファーストクラスで海外旅行をする必然性はあるのでしょうか。5月連休中は閣僚が、国会閉会後は一般議員が飛んでいきます。国内で国民から学ばない者が海外で何を学ぶのでしょうか。パリの日本大使館は議員の対応で大童とか。中にはいかがわしい要求をする者さえいるとの説も。なお、今回の中心人物松川るい女性局長は元外務官僚とか。現地大使館の議員アテンドの大変さは知っているはずでは。
▼ 悲しく情けないことです。国立科学博物館が資金不足で運営困難に陥っている。大好きな博物館、一日いても飽きません。建物を含め見どころ満載。孫娘もお気に入りで、春には家族そろって見学ツアーでした。科学立国を掲げている我が日本の科学行政の不毛を天下にさらしています。貴重な研究資料は一度失われると、もう元には戻りません。子どもの科学する心を培う大切な教育機関でもあります。クラウドファンディングにささやかながら申し込みました。独立行政法人化の弊害は、大学だけではなくあちこちに頻発しています。ここにも先進国から滑り落ちている実態が。もう一度言います。情けない国です。
<今週の本棚>
半藤一利「日本のいちばん長い日」文春文庫 2006年
8月15日は目前。78年前、ポツダム宣言を受け入れる御前会議と、敗戦を国民に告げる玉音放送を巡る丸一日の動きのドキュメンタリーである。政府、宮中、陸軍中枢の動きを証言をもとに丹念に追っている。メンツと狂信的な陸軍中心思想の異常さが読み取れる。陸軍省・参謀本部の佐官クラス参謀の狭窄した視野と思い上がりに驚く。過ちを認めない指導部に、現代の政府が重なる。
伊東潤「合戦で読む戦国史」幻冬舎新書 2022年
巷間語られる戦記物とは一味違う合戦譚。歴史を画した著名な戦いの実相と背景に迫っている。川中島の戦い、関ヶ原の戦いなど12の合戦の実態は如何に。
西脇亨輔「孤闘」幻冬舎 2023年
アベガールズの一人、国際政治学者の肩書で華麗なステップを踏んでいた三浦瑠麗によって、プライバシーを侵害されたテレビ局員は提訴し、孤独な戦い戦いを挑んで3年半。権力の庇護のもとにある著名人には、多数のこれまた有力な応援団が付く。最高裁まで戦い続け、ついに勝訴する。ミウラの夫は横領容疑で逮捕起訴され、本人の露出は激減した。でも保守派の看板娘でもあったので、復活するのかも。
★徘徊老人日誌★
7月某日 無著成恭の訃報があった。ラジオの子ども電話相談室では、子どもの質問に東北弁での回答が耳に残っている。戦後生活綴り方教育の実践をまとめた「山びこ学校」は、評価された。半面、村の親たちからは批判の声が上がった。戦後教育史上の印象深い一人である。
7月某日 久しぶりに居酒屋での宴。席を同じくするのは6人、鶴ヶ島図書館の仲間たちとの飲み会。いつものことながら、図書館の現状とあるべき姿について談論風発。その熱量に圧倒される。本の世界の豊饒さと摩訶不思議な魅力を広げたい。現役時代の力不足、構想力不足を嘆く。
8月某日 入院していた釧路の友人は手術は済み、予後の検査と養生の日々。一日も早い本復を願う。
8月某日 6日と9日は原爆の日。また主語の無いニュースが語られるのだろうか。テレビでは「〇日は原爆が投下されてから78年になります」などと淡々とつたえられる。でも誰が何のために非人道的な兵器を使用したのか。何故広島であり、長崎だったのか。否、日本に落とさねばならなかったのか、この辺りは曖昧に流されている。落としたのは米国であり、戦後の対ソ戦略のためであった、そう伝えるべきではなかろうか。核廃絶の強い意志を示す日になることを願う。反戦平和の願いを、8月だけの季節限定にしてはいけない。歴史に逆襲されぬよう、己に問い続けよう。
8月某日 埼玉県知事選期日前投票を済ませる。投票所には私と家人だけ、職員も立会人も手持無沙汰。最低の投票率と心配されている通り。与野党相乗り現職対共産候補という、例によって例の如しのパターン。争点を明らかにしての与野党対立の構図は描けないものか。文化行政、社会教行政に関する論争はあったのだろうか。因みに、埼玉県立図書館構想は人間の智慧への敬意とは縁遠いものらしい。読書人は何処に。徘徊老人の嘆きは深い。
8月お盆は目前です。お盆は地域によって違い、7月お盆もあれば8月であっても必ずしも同一の日とは限らないようです。違いはあっても祖先を思う気持ちは同じ、死者の声に謙虚に向き合い逝きし親や友人と対話し、来たりし路を振り返りつつ今後を考えたいものです。
立秋です。「暑中お見舞い」が「残暑見舞い」に変わります。植物の相、青空を漂う雲にどことなく変化を感じます。無理をせずに、炎の如きこの夏をやり過ごしましょう。猛烈な台風にご注意。
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