「200字の書評」(293) 2021.4.25
おはようございます。
先日嬉しいことがありました。いつもの散歩道(徘徊中)でのことです。街路樹の足元に、緑の葉に隠れて小さな小さな白い花が見えました。鈴蘭です。道路際の狭い植樹桝一杯に密集しています。下向きの小鈴のような連なりが可憐、かすかに香りも漂っています。
それは自宅の庭にも、ひっそりと一輪。
春の兆しの福寿草、そして郷里の初夏に咲きそろう鈴蘭です。桜の華やかさよりも、嫣然と咲く牡丹よりも、それらが嬉しい。
数年前にも同じ感動がありました、そんな思いを詩にしていました。文末に添付しておきます。よかったらご笑読ください。
さて、今回の書評は、アメリカという人工国家の抜きがたい差別体質、頑迷さの根底にあるものを衝いた一書です。
森本あんり「不寛容論―アメリカが生んだ「共存」の哲学」新潮選書 2020年
トランプ現象的なキリスト教原理主義の淵源は、ピューリタンの上陸と建国にある。寛容は必ずしも善ではなく、現代のリベラルとは理解を異にする。イギリス本国との関係、植民地運営の実務制度確立、先住民や他宗教との共存軋轢などは避けて通れない課題だった。ウイリアムズという象徴的な人物の言動と政治行動を通じて、アメリカが抱えていた問題と論争を明らかにしていく。寛容と不寛容の間には、それほどの隔絶はなさそうだ。
もう一冊、同著者による「反知性主義」(新潮選書 2017年)も参考になります。書評(133)でも取り上げました。
同じアンリでも河井某とは大違いです。
【卯月雑感】
▼ 頑迷固陋とはスカ政権のためにある言葉です。どうしてもオリンピックを開催したい、経済活動を活発にしたい。そんな思惑の陰で感染が拡大し、患者は激増し死者多数、医療はひっ迫して医師看護師の疲弊は限界を超え離職者さえ発生しています。訪米を強行して成果を強調したかったのに、宗主国の大統領は月並みな返事、かえって台湾有事の際の軍事対応さえ負わされる。ファイザー社のCEOとは面談を断られ、電話会談。電話だけなら日本でもできたはず。ワクチンの提供は口約束だけ。足元を見透かされて舐めれているのです。
▼ ミャンマーの国民虐殺は許しがたい暴挙です。権力とはまさに暴力そのもです。国際社会はこの事態に打つ手は無いのでしょうか。日本人ジャーナリストが拘束されました。国軍と太いパイプがあると称している日本政府は、一体どんな対応をしているのでしょう。安全が懸念されます。
▼ アベ、スカと続く一連の政権には「無知と無恥」は同義語であることを感得させられました。
▼ 大阪、東京では夜の繁華街に見廻り隊が出動とか。自粛警察、マスク警察に続き行政公認の自警団?そのうち御用提灯と十手を装備するのでしょうか?何やら火付け盗賊改め方が目に浮かびます。
<今週の本棚>
赤塚隆二「清張鉄道1万3500キロ」文藝春秋 2017年
清張作品の登場人物はじつによく旅をしています。時代背景は昭和20~30年代、戦後を色濃く残していました。ほとんどは蒸気機関車か電気機関車が牽く夜行列車。著者は実際に乗ったはずの路線と距離を、重複を外して計算しています。すでに廃線になった路線も多く、時代を感じます。
鉄道に格別な思い入れのある私は、懐かしくなって本棚の清張全集を取り出し「時間の習俗」「眼の壁」などを夢中で読んでしまいました。今は「草の陰刻」を開いています。未読本が積んであるのに、困ったものです。
松竹伸幸「〈全条項分析〉日米地位協定の真実」集英社新書 2021年
我が祖国は未だに米軍の占領下にあることを思い知らされる。安保条約の実務上の協定である地位協定は、実質的に憲法の上位にあって、米軍はオールマイティです。空も海も陸も、彼らの思い通り、出入国はフリーパス、米兵と軍属の犯罪もご承知の通り。税金さえ免除もしくは、大幅安。その上駐留経費はこちらの負担。情けなくて涙が出ます。是非一読を。
三度の緊急事態宣言、ワクチンの接種は不透明です。お上を当てにせず、自衛努力をしましょう。業者の皆さんの困惑と混乱が心配です。現役の皆さんは政府の無定見に振り回されていることでしょう。心身の健康に配慮してください。