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【映画】久しぶりに恋した相手は草壁タツオ『となりのトトロ/宮崎駿監督』
先日、金曜ロードショーで久しぶりに「となりのトトロ」を観た。おそらく最後に観たのは小学生の頃だっただろうか。もう約20年くらい観ていないはずなのに、シーンを見ればところどころで、セリフが次々と頭に思い浮かんでくる。「おじゃまたくし」とか。そういえば、何十回何百回と繰り返し観ていた大好きな映画だったことを懐かしく思い出した。
「ジブリ映画は、大人になってみると、感じ方が変わる。」
何度かその経験をしてきた私だったが、30歳を目前に観たとなりのトトロにて、また新たな感情を抱いてしまったので、今日はそれについて綴ってみようと思う。
結論から書くと
タイトルにも書いたように、今まで何とも意識したことがなかった、草壁タツオさんに恋してしまったのである。草壁タツオさんとは、めいとさつきのお父さんのことだ。
自分でも本当に驚いた。
驚いたのには訳がある。
自分でも完全に把握しきれてはいないが、自分自身の現実社会における異性のタイプの変遷は、ジブリ映画に出てくる男性キャラの中で誰が好きかの変遷に、何らかの相関関係が存在していることは、前々から薄々気づいていた。
【小中高時代】天沢聖司(耳を澄ませば)
【大学時代】ハウル(ハウルの動く城)
【社会人時代】堀越二郎(風立ちぬ)→ポルコ(紅の豚)
本当に驚くほどに、このキャラに通じる部分のある男性を現実社会で好きになってしまうのだから自分自身でも面白くなってしまうことがよくあった。
よくよく見ると、一貫性があることにお気づきだろうか。
特に大学~社会人時代。ハッシュタグをつけるなら
#イケメン
#モテそうなのに一人を好む
#ミステリアス
#何を考えているかわからない
#闇と孤独を抱えている
#思ったよりクズ
といったところだろうか。本当にこの時期はつらかったし苦しかった。共感できる人がいるならぜひとも酒を共に交わしたい。もしかすると聖司くんだって、もう少し時を経て大人になっていたら同じ分類に属していたかもいれない。ときが中学生で止まってくれていてよかったなとそう思っている。
というわけで、彼らのキャラクターからみても一目瞭然な、一貫性のある異性の好みで、それが揺らぐことなく苦しい盲目的な恋をしがちな私だったのに、急にここにきて、全然違うタイプの草壁タツオさんが出てきて、トトロを観ながらキュンとしてしまったので驚いたのである。
では、タツオさんのどこにキュンとしてしまったのか。
こちらもハッシュタグ形式で紹介してみようと思う。
#子育てうますぎ
まずは一家が田舎の趣きあるおうちに引っ越してくるシーン。
到着してはしゃぐめいとさつきにタツオさんがこう呼びかける。
「さぁ、2階の階段はどこにあるでしょうか?階段を見つけて2階の窓を開けましょう。」
まてまて、こんな素敵な呼びかけができるお父さんなかなかいないぞ。
シンプルにそう思った。
社会人経験の中で、しばらく子どもに携わる仕事をしていた&最近は妹の育児(甥っ子たち)に関わっている経験があったのでとてもよくわかるのだが、普通、ごく一般的に同じ状況に世の中のお父さんたちが出くわしたとするなら
「今引っ越し荷物運ぶの大変だから、2階の窓開けて手伝って!」
と言ってしまうケースの方が多いと思う。おそらく前者と後者では、子どもたちの目の輝きは極端に変わる。
ただでさえ、お母さん不在で、子どもたちと引っ越しって、身体的にも精神的にも負担がものすごくかかっているはずなのに、子どもたちのワクワクを引き出して、これからの新しい生活に期待を持たせるこの発言に思わずキュンとなってしまったのであった。
#少年のような遊び心
「お父さん、この家なんかいる!」
「それはすごいぞ!お化け屋敷に住むのがお父さんの子どもの頃からの夢だったんだ。」
家に何らかの気配を感じたさつきとタツオさんのこの会話を皮切りに、一家の家の中や身の回りで不思議なことが起こりはじめる。
そしてこの発言通り、そういった心霊現象を、めいとさつきと一緒に楽しんでいるタツオさんの姿がとても印象的だった。
お風呂で物音に屈さず大きな声で笑い声を出したり
めいがトトロに会ったという発言を馬鹿にせず、一緒に森の神様に挨拶をしに行ったり
こうやって子どもと一緒に同じ目線で(お化けを)楽しむ姿勢って、如実にめいとさつきの考え方とか行動に影響しているのだろうなとシンプルに思った。
「子は親の鏡」
という言葉があるけれど、結構これは言い得て妙な言葉で、仕事柄、私も今までたくさんの親子に出会ってきたが、子どもと数時間接しているだけで、迎えにきた親が誰なのかを当てれたりするから不思議だ。もちろん顔が似ているのもあるけれど、しぐさとか、話すトーンとか、落ち着き具合とか、言葉遣いとか、いい意味でも悪い意味でも、子どもはちゃんと親のことを、親側が想定しているよりもはるかによく見て成長しているんだなといつも思ってしまうのである。
そう考えると、この「となりのトトロ」という映画が成立しているのって、このタツオさんのおかげなのではないかと思ってしまった。
たぶん、タツオさんが「お化けなんていない」スタンスのもっと現実味のある子育てをしていたならばきっと、めいとさつきがトトロに会えることはなかったのではないかと思う。誰にもトトロが見えなかったらこの映画は成立しない。「となりの自然」的な無難なタイトルで落ち着いてしまっていた可能性を考えると、そのタツオさんありきの物語にまた、思わずキュンとしてしまった。
#大人の余裕
上記からもわかるように、タツオさんの子育ての様子とか日常を観ていると、とても落ち着きがあって余裕がある素敵な男性だなと誰もが感じると思う。
けれど、よくよく冷静になって物語の背景を考察してみると、このタツオさんのこの落ち着きと余裕って結構人間離れしていることがわかる。
妻は闘病中
収入源は自分のみ
職場鬼遠い
見る限り周りに頼りにできるのは大家さんのおばあちゃんだけ
まだめいは4歳で保育園にも通ってない
ワンオペ育児
シングルファーザーみたいな生活
もちろんファンタジーの世界ではあるものの、現実社会にこの状況を前提において、にじみでる落ち着きと余裕を持って生活を送れる人間なんていないのではないかと思う。
この超人並みの大人の余裕を持った男性と一緒にいれるなんて、お母さんを羨ましく感じてしまって、もはやジェラシーだった。
#ブレずに生きてる
映画を見終えてなお、恋の余韻に浸っていると、気になってしまうのはタツオさんのプロフィールである。とてもいい感じの投稿を見つけたので貼っておく。
お父さんの名前は草壁タツオ。年齢は32歳。大学で非常勤講師をやりながら翻訳の仕事で生計を立てています。考古学者であり、縄文時代に農耕があったという仮説を立証しようと、週2回の出勤日以外は自宅の書斎に閉じこもっています。#となりのトトロ pic.twitter.com/wagoAJkIHD
— キャッスル@ジブリフリーク (@castle_gtm) August 19, 2022
まてまて、考古学者って、どんなエリートやねん。
まてまて、しかも翻訳までしてるって、めちゃくちゃタフやないかい。
そして気づく。
彼の働き方ってめちゃくちゃ現代的だと。
非常勤講師で週2回の出勤
基本リモートワーク
考古学で自分のやりたいこと極めてる
翻訳の副業してる
移住してノマドワーカー
そして生粋のイクメン
今でこそ、こういった働き方や生き方ってコロナ化を経て一般的になりつつあるけど、そもそも映画が公開されたのは1988年。私はまだ生まれていない時代だし、しかもトトロの時代設定って、「昭和30年代の日本」で1955年って、私の祖母が幼少期の時代だ。これってサザエさんの時代設定と重なっているみたいで、言うなれば、家族3代一つ屋根の下で同じ食卓を囲むみたいな家庭像が一般的だった時代背景と比較すれば、ありえない、先駆的すぎてもはや理解されない家庭像だったことは間違いない。
そう考えるとその世の中でタツオさんが選んだ生き方って唯一無二だし、絶対に理解されないし、なのに、世間体とか気にせずに、ブレずに生きてる姿ってちょっと
イケメンすぎやしませんか。
そう思ってしまって、気のせいだと思っていた恋心にトドメを刺された気持ちになった。
そして悲しきかな、いつの間にか、タツオさんが同年代になっている。
そりゃあ、恋するわけだ。
前にこの映画を見たときはさつきの年齢と同じくらいだったのに、、、。
時の流れは驚くほどに早い。
なにはともあれ、私が今回感じたこの感想って、時代を超えて愛され続けるジブリ映画の秘密だと思うし、宮崎駿監督の先見の明って、すごすぎる。圧巻だった。これからもジブリ映画を人生の節目節目で観ていこうと思った。
最後に、今までの傾向から考察するに、草壁タツオさんに恋した私の異性のタイプは時とともに変遷しているはず。なので、もしかすると少し婚期が近づいたような気がして、まだ全然気がしているだけなのだけれど、だいぶうれしくなってちょっとホッとしたとある金曜日の夜の話。