【読書】言葉への向き合い方について考える『無人島には水と漫画とアイスクリーム/最果タヒ著』
私がいつも訪れている図書館で「エッセイ特集」という特集棚が設置してあって、ふらっと見ていたら、アイスクリームの体言止めに胸がざわついてしまって、思わず手に取ってしまった。
はじめて著者の本を読んだけれど、その言葉選びの独特な世界観にまたたく間に引き込まれてしまった。
このエッセイ集、著者がマンガを紹介しているいわば「おすすめ漫画集」みたいな大枠なんだけれど、実際読んでみると、マンガを読んだ感想よりも、それを読んだ著者が「人間」について深く考察している観点が独特で、面白すぎて驚いてしまう。
上記に引用した箇所は、そんな中でも一番刺さった考察で、私的に圧巻だったのは、ここで、誰一人として人を傷つけていないことだった。
最近、割と毎日のように文章を書いていて、毎日のように本を読んでいる日々を送っているのだけれど、そうやって文字、言葉に向き合っているとき、自分の意に反して、誰かを傷つけてしまっていたりすることが、どうしても、ある。
どうにかしてそういったことがないようにと、何度も読み返しては、書き直してを繰り返しているけれど、なかなか、うまく、いかない。
著者に会ったこともないし、どんな人なのかは検索結果で出てきた部分しかわからないけれど、そうやって「傷つけない」文章を意図して書いているのだとしたら、その忍耐力と、深すぎる優しさにただただ脱帽だった。
著者は作品の中で、上記のように、言葉に対しての、自分なりの意味や定義を付与している。この「ノスタルジー」のところなんて、的を得すぎていて、しばし余韻に浸ってしまった。
文章を書いていると、ときどき「あれこの言葉こうやって使うのであってるんだっけ?」とふと疑問に思うときが多々あって、その度にいちいち私は検索している。
「書く」と「話す」ではここにすごく違いがあると思っていて、話しているときは、その瞬間だけでなんとなくその使い方や意味をごまかせていたような部分が、こと「書く」となると、そうはいかない。
いかに自分が、あやふやな理解のままに、言葉を使っていたのかを反省している日々だ。
ただでさえ、そうやって、「書く」ための言葉の意味をきちんと理解することさえ私にとっては難しいのに、著者はそれを飛び越えて、自分なりに、言葉の意味や定義を思考し、一つの解を出している。
そういうひとつひとつの「言葉」に対する向き合い方って、一体全体何億光年、言葉と向き合ったら、そんなことができるようになるのだろうかと、ここでも本当に驚きだった。
そんな驚きと、著者の言葉の美しさに見惚れてしまううちにいつの間にか読み終えてしまっていたので、そういえば、ずっと積読していた、著者の詩集を持っていたことを思い出して、そのまま一気に読んでみた。
エッセイから、詩になるとさらにその著者独特の「言葉」への向き合い方が顕著になる。
あぁ。と言葉を失ってしまうほどに見惚れてしまった。
タイトルから考えても
夜空が青いなんて人生で一度も思ったことないし「無職、最高!」なんて最近よく口にしている言葉だけど、その密度についてなんて考えたことなかったよ、、、。
そういった著者のひとつひとつの言葉への探求が前提にあってはじめて、こうやって、ぱっと見、異質な組み合わせに見える言葉どうしであっても、ものの見事に紡がれていく、この著者の世界観に圧倒された2冊だった。