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「お母さんのことすきな人ー?」 ちびが、青空に向かって声を張る。自分が出した質問に、自ら…
色褪せた紫陽花が鬱蒼と立ち並ぶ林道を、虫網を振り回しながらちびが駆けていく。トンボだ蝉だ…
夏の昼間の海に足を伸ばすようになったのは、子どもが生まれてからのことだ。夏の昼間の海は暑…
生きてさえいてくれたら、それだけでいい。息子たちが新生児の頃、毎日そう思っていた。その気…
関東では桜も散りはじめ、新しい年度が幕を開けた。明るいお日さまの光が窓辺から差し込んでく…
この数日、ずっと悩んでいた。身体が引きちぎれそうなほど、真逆の選択肢の狭間でうんうんと唸…
大丈夫。まだ、大丈夫。 軋む音は耳を塞いで、霞む視界はこじ開けて、痛む頭は強く揉んで、そうやってあらゆるサインを無視して生きることが”強い”のだと信じていた。
「おかあさんと、いたいな」
「きょうね、おやすみしたいの」 我が家の息子たちは、集団生活があまり得意ではない。長男も…
「ねぇ、おかあさん。め、つぶって?」 ちびがわくわく顔でそう言った。言われるままに目を閉…
「その薬は、お母さんを元気にしてくれる薬なの?」 純粋な疑問をまっすぐにぶつけられたとき…
走っていた。毎日、息が上がるほどに走り続けていた。理由はたった一つ、最愛の息子を死なせな…