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「キッチン」 吉本ばなな

 ちょっとしたやるせなさと爽やかさ。そんな後味の残るお話。

 吉本ばななさんのキッチン、読み終わりました。大切な人を亡くして支え合うことになる2人の物語なんですが、2人が出会うのも距離が縮まるのも、大切な人の死がきっかけとなっていることが切なかったです。大切な人が亡くなったことで出会い、もう1人大切な人を失うことで更にお互いを必要とする。家族でも恋人でもないんだけど、あの人は私の人生に欠かせない人だ!

、、なんてちょっぴり、切ないです。


実はこの本、大学の授業で取り扱ったために読んだ作品です。

公園を抜けていくと、夜の緑の匂いでむせかえるようだった。濡れて光る小路が虹色に映る中を、ぱしゃぱしゃ歩いていった。

 この部分について、先生が言った印象的な言葉があります。「緑があった、雨が降っていた、そんなこと誰でも言える。夜だけど“匂い”で緑を感じる。雨が降って“道が光ってる”。そんな言い方はなかなかできないね。素敵ですね。そんな人と飲みたいなあ」って。確かにたった2、3行の表現ですが、すごくきれいな文章でこの物語の雰囲気を表していると思います。しかも、この物語において水と緑は大切な要素です。それをこんな形で登場させるとは、、!!



 キッチン、読み終わった後はすごく実家に帰りたくなりました。大切な人と過ごす自分の居場所、そんなことを考えてしまいます。お母さんに会いたいなあ、なんて久しぶりにホームシックです。それを一番最初に考えたので、やっぱり私の居場所は実家なんだなあって少し気持ちがほんわかしました。

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