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Something related to triangle 4
上記の4章、本編ラストです。明日以降、後書きを投稿する予定。区切り線より下から本文です。
「……亜里沙。あの頃、私たちのこと迷惑だって思わなかった?」
「迷惑って?」
「押しかけてばっかりだったじゃない」
「そうだったわね。……ちょっとだけ、思ったけどね」
"やっぱり"と溜息する口元が次の言葉を告げる前に先回りして言葉を繋ぐ。
「でもね……直海。今から言うこと、笑わないって約束してくれる?」
無言で頷く友を横に、前を向いたまま言葉を繋いだ。
「楽しかった、本当に。卒業と共に終わる時間だって分かってて、
分かっていたから余計に、三人で過ごす時間が楽しかったのよ」。
そう。その時間が楽しくて、好きだった。真っ直ぐな瞳と、それが動く姿が。その片方が自分ともうひとりを見つめ、もう片方の視線は片割れから逸れない。それでも、それだからこそ、その真っ直ぐさを愛しいと思った。
その思いの多くは綺麗事に過ぎないけれど。それでも偽りはない。偽りなく、その絆を愛しいと思った。そして。そこに居る自分の姿が、同じように愛しかった。
思いを超えて、心が言葉を紡ぐ。
「あなたたちと過ごせて良かったって思ってる」
私の言葉に、直海の笑顔が返る。その微笑みが嬉しいと、追い越された思いの向こう側で思った。
まだ飲み足りないと駄々をこねる直海を急き立て、会計を済ませて店を出た。タクシー乗り場へ向かう足をふと止めて周りに目を遣ると、ネオンが消えるビルが目立ち始めた事に気付く。灯火の下にそれぞれの夜があり、消える灯と共に人も眠りに就く。人の営みと共にある、その光はどこか暖かい。
今日、灯された光に。かつて、灯してくれた光に。
心の底から、ありがとうと告げよう。
そして、明日は私が光を灯す。大切な人を、自分を、輝かせる光を。
「気を付けて帰ってね、亜里沙。今日はありがとう」
「直海もね。今度ダブルデートしましょうって、彼に伝えて」
"ちょ、ちょっとぉ…初耳なんだけど、それっ"
親友の大声に振り返らず手を振って、「お先に」とだけ告げてタクシーに乗り込む。つい口元が綻んでしまったのは、次に会う時までの秘密。
車窓から見える光が、軌跡を描いて消えていった。
-- fin --
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作描いてくれてありがとう。
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Thank you for readers…… from Harunaga Mutsuki
後書きを作成、投稿しています。以下のリンクからお読みいただけます。
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