映画館でみたんだった

あまりにも雪がひどくて犬の散歩に行けなかった朝、NHKBSでアカデミー賞の生放送。各賞の発表の合間に、007メドレーとかクインシージョーンズ追悼とかも入って楽しい。ガモーラが相変わらず可愛かったり、「彼グランドブダペストホテルのグスタフさんだよね」と確認したり。おもしろそうだなあと思う新作映画もたくさん。作品賞をとった監督のスピーチもよかった。「映画館に行きましょうよ」みたいな。
番組が終了しかけた時、エンディングにかかったアップテンポのノリノリの曲に聞き覚えが。えーっとえーっとこれは、たしかあれだよあれ、ほら、『ウィズ』だよ。西の悪い魔女が死んで解放された人たちが喜びにあふれてところせましと踊りまくるあれ。『a brand newday』。おそらくクインシージョーンズの追悼で映画『ウィズ』のテーマソング（映画ではドロシー役のダイアナ・ロスとかかし役のマイケル・ジャクソンが歌唱したやつ）をクイーンラティファが歌ったかららその流れかな？
と、思ったら今は便利だよねすぐにググってYouTubeで確かめられる。ほらほらこれ。

何十年ぶりでみた。……んだけど、あれ？こんなんだったかなあ。もっともっともっともっと迫力があって息を呑むような群舞だったような（特に重苦しい服を脱ぎ捨てて半裸になってからの後半！）はっきり覚えてるのは、隣の席に座ってた男の人が感動のあまり「すごい」と思わず声に出して言っちゃうほどだったんだ。うめき声にも近いあの声、いまだに耳に残ってる。赤の他人のまったく知らないお兄さんの声。そう、私はこれを映画館で見たんだよ。映画館ではもちろん上映中はおしゃべり禁止。なのに声出ちゃったんだよ。そして私もあまりの迫力にまったく同じ状況だったから思わず声を出してたのは私だったかもしれない。
あ、そうか、なるほど当たり前だ。こんなちっちゃいスマホでいくらみたってあの群舞の迫力は半分も伝わらない。映画館の大きなスクリーンでみなきゃあ。ガンガンの音響でみなきゃ。
当時は、映画は映画館に行ってみるしかなかった。ネットというものもなかったから『ぴあ』という雑誌を買って上映館と時間を調べたもんだ。ネトフリもないしレンタルビデオさえない。けれど、今思えばそれがよかった。『ウィズ』だけじゃない。なんなら私は『未知との遭遇』だって『アラビアのロレンス』だって、映画館のどでかいスクリーンでみてる。『スターウォーズ』だって『バックトゥザフューチャー』だって、映画館でみるのとテレビ画面でみるのはぜんぜん違う。ホームシアターもいいけど、見知らぬ他人と感動に息をのみ、こらえているのにたまに声が出ちゃうのは、今となっては得難い体験。ああ困った。久しぶりに映画館に行きたくなっちゃったよ😊