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窓際のトットちゃん

『窓際のトットちゃん』を数日前に観に行った。
原作はまだ読んだことがなく、なんとなく黒柳さんが書いた本だということは知っていた。親もとても面白い本だよと言っていたので、いつかは読んでみようと思っていたところ、アニメとして映画化され、
公開を楽しみにしていた。

アニメーションの絵がなんとも可愛らしくて、
優しくもあり味があって、時間にすると割と昔のお話なのだろうけど、パステルカラー調でふんわり明るく
描かれていて、観ていて引き込まれた。
自分の子供時代と重ね合わせる部分もあったり、
黒柳さんの幼少期の天真爛漫さや好奇心旺盛でくるくると場面が展開していく、可愛らしくも大胆な動きには、なんだか今の卓越したトーク力や時代の先駆けを思わせる何かがあるのを感じた。
ご本人のインタビュー曰く、アニメーションよりももっと大胆なことをしていた部分もあるらしい。

今の黒柳さんを知っているからこそ、
その背景にあるものや、幼少期の環境はとても興味深く,今回の映画の中で中心的に描かれている、
「トモエ学園」は、凄く素敵な場所だなと感じた。
きっと、極端に脚色している訳でもなく、かといって黒柳さんは嘘はついたりしないだろうから、映画のために話を盛っているとも考えにくい。
やはり、実際に黒柳さんが体験した事を、
原作に基づき、忠実に再現されているのかもしれない。
私も何度か涙しそうになった。(家族がいたから頑張ってこらえていたけど。)

どうして、今の時代にも通ずるような革新的な教育ができたのかと言えば、校長先生の信念のおかげだったように思う。時代がどうとかいうが一人の考え方で、時代の壁は乗り越えることが出来るのだ。
生徒に対する愛情や未来の子供達の為に、言葉を選んでたくさんの想像力を働かせて、戦争で人々の混乱の中、後世にも残る、素敵な子供達の過ごす場所を創った功績は本当に凄いなと。私も、実は学校を作ることが小学生の頃からの夢で、なんというか、役所広司さんが声を当てられた、小林先生の役柄は言葉ひとつ一つに重みと優しさがあって、今もその言葉が黒柳さんの中には残っているというから、言葉には何かが宿るのだと思う。

なかなか、人を育てたり叱ったり怒ったり。正解がよく分からない。でも、言葉掛けひとつや言葉の使い方で、受け取る側は大きく変わることもあるし、
ましてや子供だから何も分からないと思うのは大きく違っていて、これは子供にも大人にも変わらず、誰に対しても、リスペクトを込めて思い遣りをもって、接する事が大切だと感じた。小林先生の教育思想は
きっと現代に生きる私たちにもヒントを与えてくれるのだろうな。

黒柳さんのエピソードで好きなのが、NHKの入社試験の際、答えがわからず、なんと隣の人に「これ、教えていただけませんか?」と質問したことがあるらしい。このように、一見拍子抜けするような行動だが、機転を効かせるこの姿勢が後に特にテレビ業界で活躍されていく中で沢山のトラブルやピンチを乗り越えることに繋がってきたのだと思う。
映画からは少し離れた話だが、歌番組の生放送の際中継先の少年が、シャネルズという黒塗りのコーラスグループに対し、「どうして黒人のくせに香水の名前なんかつけるんですか?」と言い放った。
その発言の後、生放送中黒柳さんはどこか様子が落ち着かなくなり、ついには「ああいうふうに、なになにのくせにという発言は、私は涙が出るほどとっても悲しく思います」という気持ちを訴えた。

なかなか自分の気持ちを交えて発言することは勇気もいることだと思うし、魂のこもった、決して怒り任せでもない、このメッセージの物の言い方が好きだ。

映画の話に戻り、どうやら黒柳さんは幼少期大きなリボンをつけていたらしい。今の玉ねぎヘアーもとてもチャーミングだが、リボンがトレードマークというのはとてもおしゃれで素敵だと思う。

そして、トモエ学園の同じクラスにいた、小児麻痺のやすあきくん。徹子さんととても仲が良かったとされる。体がうまく動かせないやすあきくんを、やってみないと分からないわよ。と木の上に導いたり、たくさんの思い出があるようだった。
このやすあきくんとの場面で心を動かされる人も多いだろう。私も体が動かせない人を「かわいそう」だとか、「助けてあげなきゃ」とか、どこか上から目線になってしまう自分を自覚している。
小林先生や徹子さんは、寄り添うような感じで、特別扱いせず、いつも隣で一緒に過ごしている姿が印象的だった。

そして、忘れてはいけないのが、戦争。
今の生活と置き換えてもとてもおそろしいことだ。
随分時間が経っているようにも思えるが、言うほどではない。身近な人が招集されていく姿、贅沢をしてはいけないという圧力。自分の好きなものが禁じられていく生活…。胸が苦しすぎる。平和とか戦争とか、大きな物のようだけれど、常日頃喧嘩だとか争いは小さいものが沢山勃発している。

そして、最後に。
トモエ学園の思い出って徹子さんが小学生ぐらいの頃だと思う。私も転勤族で、小学生の時の思い出って鮮烈に覚えている。インパクトが一番強い時代なのだ。
出会った人も、エピソードも新鮮で強烈。だけど、なかなか向こうは覚えていなかったり、自分だけ思い出を抱えてなんだか、他の人にとっては自分の見た景色や体験した思い出はたいしたことがなかったのかな。とちょっとだけ寂しい思いをしていた。

でも、やっぱり大事よね!昔だから何十年経ったからって色褪せるわけではない。そんな風に映画を見ていたら思えて、何かが報われた気がいたしました。


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