音楽家になりたいなら音大進学するべし
職業はヴァイオリニストと名乗っている私は、一般大学を卒業している。
学部生の4年間は映画・映像分析、美術史、美学、哲学、宗教学など、文化的なものを学んだ。
しかし、
その後には音楽科のある大学院に進学して、音楽留学としてウィーンの音楽院にも進学した。
だから最終学歴は【音楽科】である。
近年、私が大学院在学中から演奏のお仕事を頂けていたこと、ウィーンに留学したことで、興味を持ったと声をかけられることがある。
相談される内容は大体が楽観的で脆弱なプランで、その人の人生を左右するアドバイスをするには危うい、と曖昧な返事でやり過ごしたことが多々ある。
でも声を大にして言いたい「音楽家になりたければ絶対に音楽大学に進学するべき」
私の選んだ進路なんかに迂闊に憧れを抱くのは遠回りをするのでオススメしない、というのが本音だ。
怖いもの知らずが運良く好転しただけ
小さい頃から漠然と音楽家になりたかったが音大には進学することを選ばなかった。はっきりいって学閥の力が強い世界。音大に行かずに音楽家になろうなんて、ものすごく難しいことだ。
我ながらとても恵まれていただけ。運とタイミングがよかっただけだった。
今音楽のお仕事を頂いたり、舞台に立たせて頂くことは、自分が取捨選択していたことの一つが抜けてたら叶わなかったかもしれない。もしかしたら今頃楽器すら持っていなかった未来もあるだろう。
大学院進学のためにほぼ毎日レッスンしてくれた師匠や、ウィーンで師事する先生を紹介してくれた室内楽の師匠のおかげで今の私がいる。
高校生のときに進路を決めなければいけなかった。
高校ではいい先生たちに恵まれて学問に興味が出たり、家庭の事情で心に傷を持った友人を近くに持ったり、音楽以外のことを学びたい気持ちが芽生えた。
世間知らずの私は「音大に行ってもヴァイオリニストになれないこともあるなら、一般大にいってもヴァイオリニストになれることもあるのではないだろうか」と考えるようになったのだ。
師匠に相談したところ、自分の知ってる方でよくコンクールで上位入賞をしている、ヴァイオリンがとてもお上手なお嬢さんが、音大ではなく一般大学に行き、いまも演奏活動を続けている、と聞き、私はその先輩と大学に憧れを抱き勉強に励んだ。後にその大学に入り、その先輩と同じ学部に入ることになる。(現在、実姉のように慕い尊敬する存在だ。もちろん現在も先輩の足元にも及ばない。)
運良く縁を掴めた留学も決死の覚悟
一般大学に行ったのは
・進学先の大学で学びたいことがあったから
・個人的に習い続けたい師匠がいたから
・将来的に留学をしたかったので学費節約も兼ねてそこで音楽を専門とした学校に入ろうと考えていた
留学にこぎつくのは本当に大変だった。ここでは言い表せないほど大変だった。いつかnoteで書きたいと思うが、まだ留学したことのまとめは書けないでいる。
もちろん、音大に行かなくても世界に認められた人はいる。でもそれは、大学に進学する前にある程度完成した人だ。所謂、天才少女、天才少年、神童と呼ばれていたなら音大は視野にいれなくてもいいだろう。私の憧れた一般大に進学したヴァイオリニストの先輩もこの類の人だった。(ここで、自分が一般大に進学したことがかなりのギャンブルだったことに気づく)
世界的なコンクールで優勝したり、プロのオーケストラと共演したり、巨匠に率いられて音楽祭ではアーティスト扱い、早々とCDデビュー、クラシック番組でよく見る顔になったり、音楽の道の険しさを知らない人からみると憧れの道になるだろう。
見えないもの(音)を扱うので、見えるもの(学歴)を持ってないといけない。
もちろん技術ありきの学歴ではあるが、もしどこか選択や、出会いが欠けていたら音楽の仕事は出来なかったと思う。
どれだけ音楽に賭けてきたか
プロとアマの差はどれだけ今までの時間、労力、お金を音楽に費やしたか、に顕著に現れる。
どれだけコンクールにチャレンジして賞を取れたか、どれだけ音楽祭に参加して吸収したか、どれだけ著名な先生に師事できて見込みがあるとみなされたか。
生半可な気持ちでは到達できない場所が音楽にはある。
「昔ちょっとヴァイオリンを習ってたから一般大学オケでチヤホヤされて気分がいい」と、ここでプロのようの顔をするのは井の中の蛙だと思った方がいい。立派な賞歴はなくとも、受けるべき音楽教育は必須。
私は自分の行きたい場所に行くために寄り道もたくさんしたが、結果そこで仲間に出会えたり、新たな自分に気づけたり、収穫があった。
ゴールは無いが、踏まないといけない手順、経ないといけない過程がある。
そのためには必ず、音楽教育の機関に所属することが絶対なのだと、私は身をもって痛感した。
その道にはその道のプロがいる。音大にいくプランなしに、音楽の世界は不安定だからとそれ1本で勝負せずになにか保険をかけているようでは、必ず泣く目に遭う日がくるだろう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?