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手紙 ヴァイオレット・エヴァーガーデン

話題になっていたので録画をしてみてみた。
京アニの作品を見るのはいつ以来だろう。

一言でテーマを言うなら「人の心」だろうか。
作品は「手紙」に込められた「気持ち」に
焦点が当てられている。

主人公の名前は
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」
元軍人で武器としてのみ生きた彼女は、
上官であり恩人の別れ際の言葉
「愛してる」の意味がわらず、
戦争が終わった世界で「愛」を知るために
手紙を代筆する仕事~自動手記人形と呼ばれる~につく。
仕事で出会う人々達とのふれあいの中で
彼女の中には様々な感情が生まれていく。

自分自身が最後に手紙を書いたのはいつだろう。
私はファンレターというものをよく書く人種だったので
一般的な人たちよりは便箋を買う機会も多かったようには思う。
コロナでそういうことも一切なくなったけれど。

作品の序盤、まだ人の「気持ち」を全くくみ取れない
ヴァイオレットの代筆した手紙は
あまりにもひどいものだった。
代筆をお願いする側が、自分の気持ちを探りながら、戸惑い
手紙の言葉を紡いでいくその過程が一切無視されており、
事実のみを記した報告書のようなものになってしまっていた。
内容は間違っていないのに、手紙として成立していない。
なるほど気持ちを文字にして伝えるというのは、
こんなにも難しいことなのだなと思った。
手紙は事実だけれど、事実だけが手紙ではない、
どころか事実はあくまで事実でしかなく
手紙のメインではないのだろう。

逆に言えば手紙はそれだけ気持ちがのるものなのかもしれない。
気持ちを文字に起こすという作業はたぶん相手に伝える前に
自分の気持ちと一度向き合う。
そしてその時間が通常の会話より長い。
メールやラインよりも基本長いだろう。
吟味された気持ちが文字になるのは手紙ならではなのだと思う。

主人公の成長の物語ではあるのだけれど、
私が一番共感できたのは、
ヴァイオレットに最初に代筆を頼んだ相手の子だった。
(正確にいえば自動手記の練習のために組まされただけだが)

彼女は、両親への手紙をヴァイオレットに頼むが、
後に実はその両親は実はすでに亡くなっていて
彼女が本当に気持ちを伝えたい・・・手紙を書きたい相手は
兄だったことが明かされる。
けれどお兄さんに気持ちを伝えようとするとうまく出来ないというのだ。

不思議である。
彼女の想いを伝えれば、お兄さんは喜ぶ
実際に物語は彼女の気持ちをヴァイオレットが汲んで
手紙を兄に渡すことで良い方向に進む
「ただ自分の気持ちを伝える
それだけの行為でいい方向に進むのに、
それが出来ない

現状を変えるのがこわいのか、
想いを伝える恥ずかしさなのか、
相手の反応を見たくないのか、
理由はいろいろあるだろうが
この経験はおそらく多くの人にあるように思う。
私自身もとてもよくわかる。

手紙というものになぞらえて考えると
自分の気持ちと向き合うことが怖いのかもしれない。

物語の中では、
死によって大切な人と分かたれてしまう登場人物も出てくる。
望んでももう気持ちを伝えることが出来なくなってしまう人たち。
本来であれば、気持ちが伝えらる状況だけでも
とても幸せなことなのに、
それが出来ないというのは
非常に不器用もったいないことのように感じる。

それがまた人間らしさなのかもしれないけれど。

現代で手紙を書く機会は本当に少ない。
けれど、多くの伝えたい想いが、伝えたい人に伝わればと願う。
行き場をなくしてしまう気持ちがすこしでもなくなれば
綺麗な物語を見ながらそんな風に思った。






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yulia
日々を生きていく力にします。本当に、ありがとうございます。