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春華モモ 本の虫になる#1 子のために親としてできること。『せいいっぱいの悪口』


子のために親としてできること。

『せいいっぱいの悪口』(堀静香/百万年書房)


昼ごはんを済ませた後は、ずっと読書をした。
昨日から読み始めた『せいいっぱいの悪口』。
読み始めは、今のわたしには何だか暗くて重い感じがして、
読みにくいし途中で止めようかしらと思った。(ごめんなさい)

こう思ったのは、表紙カバーに、

どれくらい、みんなしんどいのだろう。

『せいいっぱいの悪口』(堀静香/百万年書房) 表紙カバーより

今日生きていることも、昨日生きていたことも全部本当。明日行きたいことも本当。今がすべてで、いやそんなはずはない。適当で怠惰であなたが好きで、自分がずっと許せない。事故が怖い。病気が怖い。何が起こるか分からないから五年後が怖い。二十年後はもっと怖い。今がずっといい。でも今が信じられない。なのに、今しかない。

『せいいっぱいの悪口』(堀静香/百万年書房) 表紙カバーより

なんて書かれていて、
暗くて重い感じがすると自分自身に植え付けたからかもしれない。
けれど読み進めていると文体や言葉の選び方に慣れてきたのか、
読了できそうな雰囲気になってきた。

p.118に登場する「たほいや」という遊びが面白そうだ。
p.119では、お子さんが初めて歩いた場面が記されていた。
読んでいて胸が熱くなり、作者と同じように嬉しくなった。ちょっと感動。

そして、本の最後は、「明日が怖い」と言っていた作者の堀さんが考える、お子さんのために親としてできることが綴られていた。
ここはこの作品の中でいちばん好きな部分。
そして、それはお子さんへの広く深い愛情を感じる内容だ。
そんなことを想いながら本を閉じた。

親であるわたしができることといえば、今日を、そしてその次に来るであろう明日の、あなたの命を絶やさずにいてくれることをただ、こころの底から願うことだけなのだ。怒って、宥めて、あきれて、つられて笑って、この竜巻に巻き込まれながら、とにかくわたしは、わたしたちはこの子についてゆくしかない。そしてそれはまったく同様に、他者と関係をむすぶことのすべてでもある。いつだってだれかを幸せにするなんてことはできずに、遠くから近くから声をかけながら、他者の幸せは願うしかないのだ。

『せいいっぱいの悪口』p.211

子どもを基点にどこまでも広がるこの世界のことを忘れたくないと思う。

『せいいっぱいの悪口』p.213

これらの好きだと思う内容と、心に残る文章が読めた今は、わたしにとってはもう、何だか暗くて重い感じで読みにくいものではなくなっていた。
温かな気持ちに包まれた一冊となっていた。


『せいいっぱいの悪口』(堀静香/百万年書房)
2022年11月11日 初版
ZINE「せいいっぱいの悪口 増補版」より加筆、修正されたものを主に収録しているエッセイと日記。

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