はるかかなた

主に表現の自由、政治学、法学に関する記事を作成しています。

はるかかなた

主に表現の自由、政治学、法学に関する記事を作成しています。

マガジン

最近の記事

リベラルがなぜ嫌われるのか?―リベラルの「中の人」が考えるその理由

リベラルがなぜ嫌われるのか? X(旧twitter)上では「リベラルがなぜ嫌われるのか?」というテーマが定期的に盛り上がりを見せるようですが、実は政治哲学の分野では40年ほど前に盛んだった話題なので、簡単にご案内します。その論争は「リベラル=コミュニタリアン論争」として知られていますが、このnoteではリベラルが嫌われる理由をリベラルの「中の人」の属人的な資質の問題に矮小化するのではなくて、あくまでリベラルという思想が抱える理論的な問題だということをお示ししようと思います。

    • 《当たり前》とは何か? 障碍と配慮と感謝を巡る別考

       ネット論客の青識亜論氏が下記のnote記事を上梓した。わたしは氏のnoteにはほとんど目を通すものの、これまで直接感想を発信することはなかった。しかし今回は自分なりに思うところがあったので、note記事の形にまとめることにした。なるべく小難しくならず、さっぱり呟いていきたいと思う。 1.青識亜論氏のnoteの要約  青識氏のnote記事の主旨は、こと障碍と配慮と感謝というテーマに限れば以下の4点にまとめられるだろう。 配慮の定義:(障碍者や女性への)配慮は有限な感情的リ

      • 「表現の自由界隈」がDiscordコミュニティ化しました

         表現の自由に関心を持つみなさま、はじめまして。Discordサーバー「表現の自由界隈」の管理人を務めますはるかかなたと申します。「表現の自由」という私たちの社会にとって極めて大きな価値を持つテーマについて、わたしたち「表現の自由界隈」からみなさまに大切なお知らせとご提案があります。  これまでX(旧twitter)を中心とした表現の自由に関する議論は、さまざまな誤解や偏見に満ちていました。わたしたち表現の自由界隈はこれまで、 😡「表現の自由界隈は〇〇の問題を見て見ぬ振り

        • 「表現の自由文庫」~表現の自由重要判例23選

          【はじめに】 このページは、表現の自由に関する重要判例集へのリンクを集めた判例データベースです。ニックネームは「表現の自由文庫」としました。  「表現の自由文庫」は、表現の自由に関心のある方が重要判例を通じ、表現の自由を守るための基本的な考え方や法律知識などを確認することを目的に開設しました。  判例は23ケースを収蔵しました。うち7判例が表現の自由にプラス、16例が表現の自由にマイナスな判決となっています。どういう場合に表現の自由が保障され、またどういう場合に表現の自由

        マガジン

        • 表現の自由に関心のある琴葉葵
          15本

        記事

          「性別変更時の手術要件違憲」判決文の読解に挑戦する~第3回

          【はじめに】  本稿は令和5年10月25日付の最高裁判決(性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件)、いわゆる―性別変更時の手術要件違憲判決―の判決文全文を読解するための参考資料として作成しました。  分量が長大になるため、シリーズ投稿となっています。本稿は第3回として、判決文の結論理解を目標とします。  判決文自体は以下のリンク先から無料閲覧が可能です。  https://www.courts.go.jp/app/files/hanr

          「性別変更時の手術要件違憲」判決文の読解に挑戦する~第3回

          「性別変更時の手術要件違憲」判決文の読解に挑戦する~第2回

          【はじめに】  本稿は令和5年10月25日付の最高裁判決(性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件)、いわゆる―性別変更時の手術要件違憲判決―の判決文全文を読解するための参考資料として作成しました。  分量が長大になるため、シリーズ投稿となっています。本稿は第2回として、判決文の構成理解を目標とします。  シリーズ第1回のリンクはこちら。判決文の要約理解が目標です。↓ 【本論】  2023年10月25日、最高裁大法廷は、性同一性障害特

          「性別変更時の手術要件違憲」判決文の読解に挑戦する~第2回

          「性別変更時の手術要件違憲」判決文の読解に挑戦する~第1回

          【はじめに】  本稿は令和5年10月25日付の最高裁判決(性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件)、いわゆる―性別変更時の手術要件違憲判決―の判決文全文を読解するための参考資料として作成しました。  一般的に裁判の判決文に目を通す機会は乏しいように思いますが、本件に関しては国民的関心が高いため、判決文を自分の目で見て、しっかりと自分の頭で考えを練ることが大切だと思います。判決に賛同するにせよ反対するにせよ、ぜひ判決文原文に挑戦してみてくだ

          「性別変更時の手術要件違憲」判決文の読解に挑戦する~第1回

          功利主義と「動機としての正しさ」について

          本稿では、「正しさ」における動機の問題と功利主義の関係について検討する。題材として新型コロナウイルスの治療薬の開発や、ゴジラと怪獣の戦い、そして政治哲学に関する一書籍を引き合いに出してみよう。 1.レムデシベルと米ギリアド・サイエンシズ社 米ギリアド・サイエンシズ社は1987年に設立された製薬会社である。日本ではインフルエンザ治療薬のタミフルの開発会社として知られている。 2020年1月30日にWHOによる新型コロナウイルスの緊急事態宣言が発せられた当時、同社の株価は6

          功利主義と「動機としての正しさ」について

          【10分でわかる!】西洋政治哲学史講座~主役級の哲学者16人を一挙紹介

          「哲学って難しそう」 「政治ってなんとなくめんどくさそう」 こうした二つの悪印象が同時に重なった最悪の学問分野が存在します。 それが、政治哲学です! そんな政治哲学ですが、今わたしたちが生きる社会は、2千年以上にわたる政治哲学が築いた基礎の上に成り立っています。 政治哲学を学ぶことは、自分たちの社会が「なぜ」「どうして」現在のような仕組みと形になったのか、その理由を知ることにつながります。 「政治ってよくわからないけど、なんとなくは興味あるんだよね。でも小難しい理論を覚

          【10分でわかる!】西洋政治哲学史講座~主役級の哲学者16人を一挙紹介

          功利主義と便乗値上げ

          最初に  本稿は「社会的な正しさを支える」政治哲学のうち、功利主義について批判的に概観する。功利主義がもっとも得意とする経済的な意思決定について功利主義はどのようにして道徳的な基礎づけを与えるのだろうか? そしてその基礎づけに対して私たちは、ときにどのような違和感を感じるだろうか? そうした疑問に対して、「便乗値上げ」と呼ばれる現象を題材として検討を試みる。 1.新型コロナウイルスと「便乗値上げ問題」  2020年1月16日、厚生労働省は新型コロナウイルスによる肺炎の国

          功利主義と便乗値上げ

          NPO法人制度の入門知識

           本稿では、NPO法人についての入門的な知識をご紹介していきます。どんなきっかけであれ、NPO法人について興味を持たれた方にとって少しでも役に立つ投稿になることを願っています。 1.NPOとNPO法人制度 まずはNPOとNPO法人の違いを押さえていきます。  NPOとは、Non-Profit Organization(非営利団体)の略称で、社会的な問題の解決や公益的な活動を目的として設立された団体のことを指します。  NPO法人とは、特定非営利活動促進法(NPO法)に基

          NPO法人制度の入門知識

          二つの自由概念~「消極的自由」と「積極的自由」について

           本稿では、自由を哲学するにあたって欠かすことのできない古典的論文をひとつご紹介したいと思います。アイザイア・バーリン著の「二つの自由概念」(「自由論、みすず書房」収蔵)という論文が本稿の主役になります。 1.アイザイア・バーリンの人となり  アイザイア・バーリンは、20世紀の英国の政治哲学者です。1909年にラトビアに生まれ、幼少期にイギリスに移住。オックスフォード大学に入学すると、哲学科で頭角を現し、後に同大の教授に就任しています。  バーリンの功績は、とりわけ「自

          二つの自由概念~「消極的自由」と「積極的自由」について

          chat GPTがバラク・オバマ風に同性婚に賛成するエッセイを書いてくれたよ。

           このテキストは、chat GPTに以下のリクエストを出したレスポンスになります。  chat GPTへの指示はこれだけ。回答文は2分以内に出力されました(ただし低スペックなわたしが30分ほどの時間をかけて翻訳しています)。  文体もさることながら、一般論として内容への違和感も個人的にはありません(わたしは個人的に同性婚に賛成の立場を取っています)。  chat GPTがいかに革命的なのか、わたしの感じた衝撃を少しでもみなさんとシェアしたいと思ってこの記事を投稿します。

          chat GPTがバラク・オバマ風に同性婚に賛成するエッセイを書いてくれたよ。

          表現の自由サポート vol.2~パブリックフォーラム論

           本稿はわたしが【表現の自由】を巡る疑問に応えることを通じ、読者のみなさんと一緒に、自分の考えを深めたり整理したりするサポート役になることを期待したシリーズnoteです。第2回は、「『パブリックフォーラム』とは何か?」という質問に回答します。  一般論として、「人権は時と場所によってその行使が制約される」というルール自体に異論のある方はあまりいないでしょう。しかしそのルールをどうやって決めるのかとなると議論紛糾待ったなし。問題になりえるのは「どんな時、どんな場所で、どんなふ

          表現の自由サポート vol.2~パブリックフォーラム論

          表現の自由サポート vol.1~公共の福祉とは何か?

           本稿はわたしが【表現の自由】を巡る疑問に応えることを通じ、読者のみなさんと一緒に、自分の考えを深めたり整理したりするサポート役になることを期待したシリーズnoteです。第1回は、「表現の自由を制約しうる『公共の福祉』とは何か?」という質問に回答します。  まずは手元の辞書を引いてみます。公共の福祉とは、「人権相互の矛盾衝突を調整するための実質的公平の原理」であると定義されています(「法律学小辞典 第五版」、有斐閣)。  しかし福祉という単語を聞くと、老人福祉という言葉が

          表現の自由サポート vol.1~公共の福祉とは何か?

          表現の自由に関心のある琴葉葵ちゃんが、「あたらしい憲法のはなし」を朗読したよ⑬

          表現の自由に関心のある琴葉葵ちゃんが、みんなと一緒に政治哲学や法哲学を勉強します。第十三回として、終戦直後に当時の中学一年生に配布された社会科の教材、「あたらしい憲法のはなし(第十三章_地方自治)」を朗読します。「表現の自由」を規制する命令として、地方自治体による「青少年健全育成」という条例があります。青少年の健全な育成は、主に地方自治体の役割だからです。それでは、ひるがえって「地方自治」とはどういうことなのでしょうか?

          表現の自由に関心のある琴葉葵ちゃんが、「あたらしい憲法のはなし」を朗読したよ⑬

          表現の自由に関心のある琴葉葵ちゃんが、「あたらしい憲法のはなし」を朗読したよ⑬