228.小説も記事も文章は口に出して読んでいる
言葉を紡ぐときに大切にしていることは、”響き”です。
文章の音を聴きながら、一文ずつ言葉を紡いでいます。
なんかそれっぽいことを言っているように感じるかもしれませんが、簡単にいうと「自分の書いた文章を口に出して読む」ということです。
書いた文字はあくまで文字で、書いている最中には違和感には気づきません。
そして案外、目で読み返すだけでも文章のちょっと変なポイントに意外と気づかないものなのです。
話す言葉と読む言葉は違う
文章には口語と文語があり、話し言葉と書き言葉で違いがあります。
話すときは省略していたり、同じ言葉を繰り返しても違和感がなかったりする一方で、書き言葉は話す時に無意識なちょっとしたポイントで、印象が変わったりします。
いくつか例を挙げてみましょう。
修飾語が長くなることは、ついつい文章を書く上で起きがちなことです。
句読点がないことと、どの文章がどの主語につながっているのかがわかりづらい。
基本的に、情報が絞られて整理された文章だと、読みながら理解しやすい一文となるでしょう。
句読点の場所は、それこそ実際に口に出すと気づきます。
息継ぎの場所に「、」を入れればいいのです。
また、書いていると見過ごしやすいのが、切れる文章をつなげて長くしてしまうことです。
意味はわかるし、話しても違和感なく伝わるかもしれませんが、文章だと少々くどい印象が与えられてしまいます。
ワンセンテンス、ワンメッセージ。
一つの文章で伝えたいことは一つというシンプルさが、読み返した時にチェックしたいポイントです。
主語と述語が一つずつで連動していることが、文章のシンプルさを出して読みやすくなり、つまり理解しやすい文章になります。
口に出すと、理屈で考えるとよくわからない修飾語や主語述語、句読点の位置などに気づくことがあるでしょう。
文章を書ききった後には、ぜひ読み返してみてください。
カレーと同じで一晩寝かせてから、文章を読み直すのがオススメです。
小説は感情まで込めて読み返している
余談ですが、僕は基本的に記事ではなく小説を書いてきました。
小説は、セリフと地の文が明確に分かれています。
女性のセリフも、自分とタイプの違う登場人物のセリフもあります。
また、情景の説明、繊細な心情の描写など、書くことは非常にたくさんあります。
その場合も、自分がそのキャラクターになりきって読み返すことを大事にしています。
このとき、こういう状況でこのセリフだったら、主人公は何を思って、どんな描写ができるだろうというのは、自分が演じてみて気づくことがあるのです。
例えば、僕の作品『小夏のブルペン』で無料公開されている、一章の最後のシーン。
ここは一言一言、情景と心情を思い浮かべながら書き記していきました。
まるで告白するかのように、恐る恐る探りながら、時に大胆に、セリフを探すこともあります。
そしてそのときの世界を、できる限りありのまま表現する。
小説の文章は、そんなことの積み重ねです。
思いを込めて文章を書く。
それは、小説でもビジネス書でも、記事でも呟きでも変わりません。
文章の目的は伝えることですから、伝わるように、より届きやすいように、受け取りやすいように、言葉を紡ぎましょう。
ぜひ一度、書いた文章を口に出してみてください。