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東京家族

鑑賞時の感想ツイートはこちら。

2013年の日本映画。山田洋次監督が、小津安二郎の名作『東京物語』をモチーフに描いた家族の物語。田舎の年老いた両親が、独立している子どもたちを訪ねて上京する数日間とその後の様子を、あたたかさと切なさで綴るヒューマン・ドラマ作品です。

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監督は、『男はつらいよ』シリーズ、『霧の旗』、『幸福の黄色いハンカチ』、『学校』シリーズ、『たそがれ清兵衛』、『おとうと』、『小さいおうち』の山田洋次
出演は、橋爪功吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡蒼井優、ほか。

大好き! 山田洋次監督。

以前、こちらの記事にも書きましたが、わたしは山田洋二監督の作品が大好き!♡ 

市井の人々のささやかな日常、人と人の間に交わされるあたたかい人情、日本人ならではの繊細な心の機微を丁寧に描かせたらピカイチ! わたしが子どもの頃から活躍する、邦画の名監督だと思います。

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山田洋次監督が生み出した作品は本当に沢山ありますが、わたしが一番好きなのは、やっぱり寅さん

シリーズ最終作『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年)も、もちろん観に行きましたよ~! 最終作にして、わたしにとっては “はじめて劇場で観る寅さん” でもありました。

『男はつらいよ』シリーズや『学校』シリーズを観ていただくと、回を重ねるうちに山田洋次作品の素晴らしさにだんだん気づくと思うのですが、たとえば、こういうところ!

作品を観ていてこういうシーンに出くわす度に「ああっ、たまらない!」と感じてしまいます♩笑

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ついには “ヤマヨウ愛” が高じて、東京下町にある葛飾柴又へ。遠征散歩も果たしました。いわゆる「聖地巡礼」ってやつですね♡

柴又の「寅さん記念館」も見学。寅さん、さくら、おいちゃん、おばちゃん、博、タコ社長―― みんながいた本物のセットに、テンション爆上がりでした。

こちらのセリフは、ほんとに名言! シリーズ第16作『男はつらいよ 葛飾立志篇』(1975年)より。

「葛飾立志篇」の脚本は、山田洋次監督と朝間義隆さんの共同脚本とのこと。これがあの寅さん(渥美清さん)の口調で語られるからこそ、最高の “あたたかみ” が出るのですよね~!

「寅さん記念館」に併設されている「山田洋次ミュージアム」では、こちらの展示で大興奮。

わたしのオールタイム・ベスト邦画に輝く『砂の器』の脚本!(野村芳太郎監督の名作『砂の器』については、こちらの別記事に♩ ↓↓)

小津安二郎の『東京物語』がモチーフ

本作は、小津安二郎の傑作『東京物語』(1953年/出演:笠智衆、原節子)をモチーフにしていることでも話題を呼びましたね。

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タイトルロゴからして小津へのオマージュが。

『東京物語』デジタルリマスター版の予告編はこちら。

はい、ここにも有名な「小津調」が表れていますね! 映画好きのみなさんは、覚えておくと楽しいですよ♩

リマスター版では、ロゴのデザインが変わってしまっていますね。わたしは、長体がかかったような、几帳面な感じのオリジナル版ロゴが好きです。

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小津の『東京物語』は各国の映画監督から敬愛されており、次のようなオマージュ作品があります。

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○『東京画』/監督:ヴィム・ヴェンダース
○『みんな元気』/監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
○『珈琲時光』/監督:侯孝賢
○『HANAMI』/監督:ドーリス・デリエ
○『東京家族』/監督:山田洋次

世界からのリスペクトを集める、その『東京物語』も、実は 1937年の映画『明日は来らず』(監督:レオ・マッケリー)をベースに作られているのだとか。時代を超えて受け継がれる、テーマの普遍性がうかがえますね。

丁寧な描写と、役者陣の演技が見どころ

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主な登場人物
○ 父・・・周吉(橋爪功
元教員。寡黙で愛情表現が苦手。次男の昌次と折り合いが悪い。
○ 母・・・とみこ(吉行和子
夫の三歩後ろをついてゆくような、昭和の日本の良妻賢母。

○ 長男・・・幸一(西村雅彦
東京郊外で開業医をしている。急患が入り、両親を東京見物に連れて行けなくなってしまう。
○ 長男の妻・・・文子(夏川結衣
仕事で多忙な夫を支えながら、子育てや家事に勤しむ。

○ 長女・・・滋子(中嶋朋子
東京で美容室を経営している。仕事が忙しく両親の相手ができない。
○ 長女の夫・・・庫造(林家正蔵
人当たりが良く、多忙な妻に代わって、上京した義両親を駅前の温泉に連れて行く。

○ 次男・・・昌次(妻夫木聡
東京で舞台美術の仕事をしている。独身。元教員の父・周吉からは「将来性の見えない仕事」と言われ、反発する。恋人・紀子との結婚を考えている。
○ 次男の恋人・・・紀子(蒼井優
書店員。昌次とは福島の震災支援で知り合った。多忙を理由に両親の相手を進んでしたがらない実の子たち(長男、長女、次男)に代わり、二人に優しく接する。気立ての良い女性。

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ストーリーは、小津の『東京物語』をほぼ踏襲しています。すっかり自分たちの手から離れ、東京で独立している子どもたち。それぞれに仕事や家庭を持ち、それぞれの生活があります。

世話になった昔の同僚が他界した折、自分の体調の都合で通夜にも葬儀にも出られなかったので、遅ればせながら上京して、せめて線香をあげに行きたい――父・周吉の上京は、そういう理由でした。

もちろん、それも目的のひとつではあるのですが、田舎で暮らす両親にとっては「子どもたちの顔が見たい」というのも、もうひとつの大きな理由であり、楽しみでもあったのです。

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ところが、突然訪ねてこられた子どもたちにとっては、仕事に追われる中、両手を挙げて大歓迎―― とはいかない心境で。

開業医の長男(西村雅彦)。美容室を経営する長女(中嶋朋子)。舞台の裏方として働く次男(妻夫木聡)。皆、両親を大切にしたい気持ちはあるし、それを口にもするのですが、それとは裏腹に「面倒だな」「早く帰ってくれないかな」という心の内も見え隠れして――。

遠く離れた子どもたちの顔を久しぶりに見たい親の立場。日々の生活の中では、「親の相手」の優先度はそれほど高くない、実の子どもたち3人の立場。わたしくらいの年代になるとどちらの気持ちもわかるだけに、山田監督の細やかな演出や丁寧な描写が沁みます。

また、息子や娘の「配偶者」の立場(夏川結衣や林家正蔵が演じていた役どころ)も、

「ああ、わかる!」
「こういう場面、あるよね~」

と、かつて自分が “長男の妻” だった頃のことを懐かしく思い出しました。林家正蔵さん演じる「長女の夫」の愛想の良いお婿さんぶりとか、親戚の中に一人はいそうな感じで、リアルでしたね~。甥っ子や姪っ子の相手も、嫌がらずにしてくれそうな。笑

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『東京物語』では笠智衆東山千栄子が演じた両親役を、『東京家族』では橋爪功吉行和子が味わい深く演じています。

以下、感想ツイートより――

吉行和子さん、橋爪功さんの老夫婦。いい〜! 品川駅の雑踏で、池袋のデパートの屋上で、横浜の豪華ホテルのお部屋で、佇む二人の "ぽつり感" がいい。都会の気忙しい時間の流れから取り残されたような。でもそれに抗わず、受け容れている感じ。さすがだ。

ぽつり感

ほんと、そうなんです。田舎から出てきたおじいちゃん&おばあちゃん感がとても良く醸し出されていて、さすがベテラン俳優のお二人だなぁ……と感じ入りました。

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ところで、『東京家族』は もともと 2011年12月に公開予定だったのですが、クランクイン前の 2011年3月11日、東日本大震災が起きました。これを受けて、公開は一旦延期に。当初は、菅原文太市原悦子が両親役に、室井滋が長女役にキャスティングされていました。

その後、上記キャスト3名は降板。仙台出身の菅原文太さんは、震災を機に「今は映画を撮っている時じゃない」「劇映画の存在理由が見いだせない」と俳優業を引退し、復興のためのボランティア活動に献身。市原悦子さんは、S状結腸腫瘍のため。室井滋さんは、スケジュールの都合のため。

震災後、多くの映画人がみずからの存在意義を自問する中、山田監督自身も被災地を訪れ、脚本を見直し&加筆。キャストを橋爪功、吉行和子、中嶋朋子に変更して本作を完成させたのだそうです。

(完成版とは配役が異なるバージョンも、ちょっと観てみたい気がしますね!)

出演している俳優陣が、皆、いい演技を見せてくれます。(『北の国から』の蛍ちゃんでお馴染み)中嶋朋子さんも、ちょっぴり “嫌な” 役まわりなのですが、すごく「いそう!」という感じで、さすがのお芝居。

久石譲の音楽も、また良いんですよね♩ 物語の情感に入り込んで、涙を誘います。


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もり はるひ
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