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森博嗣「なにものにのもこだわらない」

私の中にある固定観念がぐらりと揺さぶられた。世の中の多くの人が、何かしらの「こだわり」を持つことを美徳とし、強い信念やポリシーに基づいた生き方が尊ばれる傾向にある。けれども、森博嗣はこの本で、そうしたこだわりに囚われることの無意味さ、むしろそれが自分の自由を奪うものだと説いている。

まず印象に残ったのは、著者が「こだわり」を「選択肢を減らす行為」として捉えている点だ。多くの人は自分のポリシーを持つことで、自分が「正しい道」を歩んでいるという安心感を得るかもしれない。けれど、その一方で、あらゆる可能性を閉じてしまうリスクもある。こだわりが強ければ強いほど、柔軟性を失い、他者の視点や新しい発想を取り入れる余地がなくなる。森博嗣の「こだわらない生き方」には、より広い視野で物事を捉え、軽やかに人生を歩んでいく姿勢が感じられた。

この「こだわらない」という考え方は、私にとって新鮮であり、少し怖さも感じた。なぜなら、私自身、これまでどこかで「自分らしさ」を守るためにこだわりを持とうとしていたからだ。選び抜いたスキンケアやファッション、仕事に対するスタンスなど、無意識のうちに自分のアイデンティティをこだわりに頼っていた部分がある。でも、それは本当に必要なことだったのだろうか?

森博嗣が示す「なにものにもこだわらない」生き方は、むしろ「本当の自由」に近いのかもしれない。何かに固執するのではなく、目の前の状況に柔軟に対応し、変化を楽しむ姿勢。そのほうが、心に余裕ができ、より多くの可能性に出会えるのではないかと感じた。

この本を読んだ後、少しずつ自分のこだわりを手放してみようと思った。たとえば、ワードローブを揃えようとするのではなく、今あるものでどうにかすることや、何かを決める際に「こだわらない」という選択肢を意識的に持つこと。それが私にとって、軽やかな日々への第一歩になる気がする。

『なにものにもこだわらない』を読んで、私は「こだわりを持つこと」そのものが目的化してしまうことの危うさに気づかされた。これからは、自分の中のこだわりを見直しながら、もっと柔軟に、自由な心で生きていきたい。森博嗣が提案する「こだわらない生き方」は、執着から解放され、本来の自分と向き合うための鍵となるのかもしれない。

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