今週の読書録
こんばんは。
年末年始のお休みが空けた今週は、都心部でも雪を目にする機会がありました。
こんな日にはリモートワークのありがたさを痛感いたします。
仕事終わりには、お気に入りのバスソルトを使用して、バスタイム兼読書タイム。
今週は大掃除で発見した書籍を含め、小説2冊を読了。
境界のポラリス
一冊目は、昨年秋に刊行された『境界のポラリス』。
2020年の講談社児童文学新人賞佳作受賞作です。
講談社児童文学新人賞は、1959年に講談社創立50周年記念の文学賞として創設された児童文学作家の登竜門として知られている賞です。
著者の中島空さんは、出版社にお勤めされながら児童文学作家としても活動されているのだとか。
ご自身が海外にルーツを持つ子どもたちと接した経験も取り入れて執筆された作品とのことです。
以下の記事でも紹介されているように、想像以上に多くの学生が日本語について課題を抱えていることは、日常生活を送る上では特段意識したことがありませんでした。
現在、280万人以上の海外の方たちが、この日本で暮らしているといいます。それに伴い、海外にルーツを持つ子どもたちも、増えつつあります。
文部科学省の調査(「外国人児童生徒等の教育の充実について(報告)」)によれば、日本語の指導が必要な生徒の数は5万人以上に達し、不就学状態に陥っている学生は2万人近いとみられるそうです。
(以下の記事より抜粋)
『境界のポラリス』は、児童文学書受賞作品ですが、学生はもちろん社会人が読むにもよい内容かもしれません。
登場人物たちの日々の心の揺らぎも丁寧に描写されているので、大人が見ても読みごたえのある内容に感じました。
家庭環境や生活水準によっても、もちろん直面する課題は異なりますが、多様な境遇の登場人物が違和感なく揃う様子が、逆にリアルに感じます。
主人公は海外にルーツをもつ女子高生。
幼少期に来日し、今では日本での生活の方が長い。
一見、日常生活では大きな不自由はないかと思いきや、実際には日本での生活に対して色々と思うところがある様子。
友人や周囲の人々との交流を通じて、日本で生活する海外にルーツを持つ学生の捉え方、日本語で難しいと思う箇所などに改めて向き合う主人公。
主人公自身が苦労して日本語を習得したならではの視点で、日本語指導を行う描写も丁寧です。
読書感想文の課題図書や日本語教育に携わる大人にもよいかもしれないと思う内容でした。
続編も描けそうな最後なので、著者の次回作にも期待しています。
恵子は中国生まれ日本育ちの高校生。母と、母が再婚した日本人の父と三人で暮らしている。ある日、バイト先のコンビニでマナーの悪い客にからまれているところを、大学院で中国文学を学ぶ幸太郎に助けてもらう。彼は、埼玉県川口市にある日本語教室「青葉自主夜間中学」で、外国人の子どもたちに日本語を教えてもいるらしい。興味を持った恵子は、この教室を訪れるのだが……。
わたしは日本人? それとも中国人? 自身のアイデンティティに悩む主人公と、日本社会に溶けこむため、懸命に日本語を学ぶ中国やベトナム出身の同世代の子どもたち。日本で暮らす困難を共有しながら、友情をはぐくんでいく彼女たちの姿を感動的に描く! 異文化交流の難しさと大切さを伝える、第61回講談社児童文学新人賞佳作入選作品。
風待心中
山口 恵以子さんの『風待心中』は、数年前に購入し、大掃除で発見しました。
同じ山口さんの作品の中でも『食堂のおばちゃん』や『婚活食堂』シリーズとは異なり、あらすじでも紹介されているように読了感がゾワゾワする作品です。
脇役の奉行所勤めも良いキャラクターで、映像化されないか楽しみに感じながら読み進めました。
表紙やあらすじからも伺えるようにハッピーエンドではありませんが、数年経つと読み返したくなるような味わいがあります。
時は幕末、災害が続く安政の深川を舞台にしたサスペンス。
花街を舞台にした心中ものとは一線を画す、町人の日常の中で起こる時代ミステリー。
現代で起きれば週刊誌で騒がれること間違いなし展開。
創作とは思えない、現代日本でも起きる可能性がありそうな事件と結末に、何だか首のあたりが寒くなるよう。
トンビが鷹を生む。
再婚もすることなく女手一つで育てた大事な一人息子は、幼少期から神童と名高く頭脳明晰、見た目もすこぶるの美男。
決して恵まれた出自ではなく、町人の出でありながらも出世コースに乗り、師匠の娘婿にも内定という順風満帆に見える中で、ほの暗い過去や事件が顔をのぞかせる。
ラスト20ページだけは読みたくなかった――
眉目秀麗、将来有望な蘭学医の卵・真吉。その心中事件に秘められた衝撃の真相とは……。
親思いで優しく、蘭学所からの信頼も厚い彼は、長崎への留学を控えていた。そんな折、女を狙った凄惨な連続殺人が起こり、真吉が先生役を務める寺子屋の少女も犠牲になってしまう。彼は自ら犯人を捕まえようと立ち上がるが、その直後、真吉自身にも思わぬ容疑がかけられる。
息も抜かせぬ展開、そして待ち受ける衝撃の結末。
嫉妬と愛憎渦巻く、一気読み必至の長編時代小説。