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本の補助線
1年後の自分に向けて忘れないように書いておこうと思います。
忘れてたら、思い出すように。
ここ数冊のブックライティングのうち、著者さんもパワー全開で、編集さんもデザイナーさんもいい仕事をしてくださって、本としていい勝負になる仕上がりになったと感じたのに、売れ行きが思ったほどではない本があります。
大型書店も店を閉じる時代、思ったより売れない理由はいくらでもあるのでしょう。でも、ライターとして「あれが欠けているからかも」と気づいたことが1つあります。
それは著者さんがこの本を世に出す動機、思い、自分史の盛り込みが足りなかったことです。
それぞれの本のテーマは、脳神経科学や心理学などの研究をベースに多くの人が抱える悩みの解消を目指すという意味で共通しています。
問題提起があり、原因の分析があり、解消のための糸口の提案があり、具体的なノウハウが積み重なり、そのうちのいくつかが読者さんの心を掴めば購買につながるという設計です。
著者さんは持てる知識と経験と実践を語り、ライターは読みやすく、理解しやすく、それでいてできるだけ読者さんに寄り添える原稿を目指し、編集さんとともにインタビューをくり返します。
結果は上々。役に立つ原稿になりました。
でも、実際に本の形になって再読してみて気づきました。
著者さんの顔がぼやけているかも……と。
ビジネス書、実用書は基本、テーマ勝負で、著者さんのファンが「同じ作者だから」と買ってくれるジャンルではありません。
それでも「著者さんがこの本を世に出す動機、思い、自分史」がバランス良く盛り込まれた本は、テーマに惹かれて読んだ人を著者のファンにしてくれます。
だから、ライターは著者さん本人が自分で書くには照れくさい思いや動機を聞き出し、うまく原稿にしていく意志を持ち、インタビューをするべきです。
今回、売れ行きが思ったほどになっていない本たちは、その取材姿勢が足りなかったのではないか。それを忘れないよう、noteを書いています。
1冊の著者さんとはもう何冊もいっしょに本を作っています。
その著者さんにとって1つの転機となったヒット作をご一緒したことで、ありがたいことに信頼してくださっています。
本の形で世に出したい情熱も、その背景にある個人史もしっかり聞かせてもらっている手応えがあります。なぜなら、それを原稿化した本がヒットしたからです。
結果、書けた、伝えた、という勘違いがありました。
ビジネス書、実用書は基本、テーマ勝負で、著者さんのファンが「同じ作者だから」と買ってくれるジャンルではないのです。
このテーマだからと店頭で手に取ってくださった読者候補さんたちにとって著者さんは「初めまして」の人です。
あの本の著者の、この先生なんだから安心ですよ……は、こちらの都合。
当然、なぜこの人はこのテーマの本を書いたのだろう? この人が書くことに説得力があるのだろうか? そもそもこの人は誰なんだろう? と思います。その疑問に対する、ある程度の答えは序盤で書かれているべきです。
そのメッセージが弱かったのだと思います。
なぜ弱くなったのかと言えば、インタビュー時に「この著者さんのバックグランドはわかっている」とおごったからです。
自分はもう聞いているし、書いているから、時間もないし、ノウハウのほうを厚めに取材しよう、と。
調子乗んなよ、おい。
きちんと仕事をしようぜ。
小手先で原稿書けると思うなよ。
読みやすくて、バランスが取れているだけじゃ、刺さらない。
刺すのを狙いにいって当たるものじゃないけれど、刺さらない原稿はヒットしないんだぜ。