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大学生活はもう過去の話
”ズッコケ3人組”
そんな呼ばれ方をし始めたのは、まだ大学に入って半年も経っていないある夏の日。
大学に入って一番の問題はとにかくお金がなかったこと。
親に無理を言って学費を払ってもらったので、生活費はわずかしか貰えなかった。
だから向暑はるは入学式の次の日くらいに、一人暮らしの家から比較的近いファミレスでアルバイトを始めた。
そのような同じ考えを持つ人が向暑はる以外に二人もいた。
都会で生き残ることはとにかく騒ぐことという変な考えを持っていた向暑はるは、アルバイト初日からぶっ飛ばしてしまい、
先輩と店長からはやばいやつを採用してしまったと心配されていたらしい。
でもそのノリは”二人”には好印象だったようで、すぐに意気投合し、ある意味問題児として一括りにされた。
ある意味というのは、仕事はしっかりできるけどノリがアホという意味である。
その結果の”ズッコケ3人組”である。
その半年後くらいに同じ大学の同級生が入ってきた。
話したことも面識もないのに、いきなりのタメ口で広島出身の口から出てくる訛りは、
もちろん社員の評価は悪かった。
でも”3人組”の評価は最高だった。
いつの間にか”3人組”は”4人組”となっており、またしても一括りで呼ばれるようになる。
”アホ四天王”
その数ヶ月後、向暑はるの紹介で大学の友達がアルバイトを始めた。
案の定、向暑はるとそもそも仲がいいので”4人組”が”5人組”になっていく。
そして勝手にこう呼ぶ。
”嵐”
間違いなく叩かれると思うが、身内のノリだから許して欲しい。
もちろん名には相応しい功績もちゃんと残していて、月を通して全国で一番売り上げた店舗に初めてなった。
その祝福会で先輩と”5人組”で飲みすぎてしまい、後に社員からひどく叱られた。
この6人をまとめて”お粗末さん”と呼んだ。
先日、この記憶をショートフィルムのような夢で見た。
いつの間にか”大学生活”が身近なものではなく、一種の”思い出”として形成され始めてきたことに寂しさと苦しさを感じた。
もう忘れてしまったこともたくさんあるだろう。
夢の中のアルバイト先の壁紙は、見たこともない真っ白な壁で塗りつぶされていた。